事業計画策定する時、ネット情報って、なかなか検索に時間かかるんだよなぁ
なんかもっと、外部環境とかの2次情報をまとめてくれている良書ってないのかなぁ
と、悩んでいる方必見!中小企業診断士として、経営者のお悩みを日々課題解決に導く仕事をしている私が、【業種別審査事典の活用方法】について記事をまとめました。
- 業種別審査事典って?
- どんな構成?
- 具体的にどう使うの?
この記事を読んで頂ければ、事業計画策定の時間が効率化し、支援企業独自の課題解決に集中できること間違いなし!
おはようございます!【朝活ブロガー中小企業診断士】のグレート☆セバスチャンです。私のプロフィールは、こちらへ。
それでは、さっそくいってみましょう!
業種別審査事典って?
てか、そもそも業種別審査事典って何?
まずは、興味をもって頂いた方、ありがとうございます。もし活用していなかったのなら、これからのあなたの事業計画策定のスピードが格段に向上すると言っても過言ではありません。
業種別審査辞典は、一般社団法人金融財政事情研究会、通称【きんざい】より出版されている日本の業種ごとの分析を詳細にした事典です。特徴として以下があります。
- 1600業種収録
- 圧倒的な定性・定量データの数
- 各分野のプロによる執筆・監修
日本の業種1600種を掲載している書類は唯一無二です。圧倒的なデータ量があり、各分野のプロが執筆をしていることから信頼度が高いことは言うまでもありません。
特に重要な点は、全国の金融機関、官公庁、地方自治体、大学、一般事業会社、そして会計士、税理士、中小企業診断士、経営コンサルタント等の実務家に広く利用されているとういう点です。
私も仕事柄、補助金の審査をしますが、この業種別審査事典からの引用であれば、それだけで信頼度の高いデータだと判断するような実務で活用できるものです。
なお、中小企業診断士を目指す方で中小企業診断士養成課程をクリアした方は、この事典が毎回図書館で取り合いであったことを知っていると思います。
また、中小企業診断士やその他の経営支援をする立場の人間でも、全ての業種において知識が豊富な訳ではありません。当然、日々全く知らない業種からの相談も数多くあるはず。事前に業種別審査事典を活用し、知識を得ておけば、社長との話で「良く知ってるね」と言われた経験がたくさんあります。
第15次業種別審査事典 | 一般社団法人金融財政事情研究会 (kinzai.jp)
別にきんざいの営業担当者ではありませんが、2024年1月に書籍が刊行されます。なお、社内ネットワーク版は11月から先行して販売開始。シングルライセンス版は2024年3月リリースです。
どんな構成なの?
具体的にどんな内容があるの?ということでサンプルとして、開示されている内容を基に解説をしていきます。
目次
全10巻で以下の構成となっています。
- 農業・畜産・水産・食料品・飲料分野
- 紡績・繊維・皮革・生活用品分野
- 木材・紙パ・科学・エネルギー分野
- 鉄鋼・金属・非鉄・建設・廃棄物処理分野
- 機械器具(一般、電気・電子、精密、輸送)・防衛分野
- 運輸サービス・不動産・住宅・飲食店分野
- サービス関連(士業、コンサルタント、代行・仲介業)・学校・地公体・冠婚葬祭分野
- 美容・化粧品・医薬・医療・福祉・商品小売分野
- 旅行・スポーツ・レジャー・娯楽・ペット分野
- 商社・金融・レンタル・IT(情報通信)分野
これらの分野について、1600程度の業種が解説されています。
内容
明解な構成という内容のとおり、わかりやすい構成になっています。ここではサンプルの【ボイラー製造業】をいっしょに見ていきましょう。
※以下、一般社団法人金融財政事情研究会ホームページより引用
①全体の構造
Ⅰ 業界の理解
1 業界の特色
2 市場規模
3 地域的特徴
Ⅱ 業界の動向
1 需要動向
2 課題と展望
Ⅲ 業界内容・特性
1 製品の知識
2 生産形態
Ⅳ 業種分析のポイント
1 取引形態と条件
2 資金需要
Ⅴ 財務諸表の見方
Ⅵ 経営支援の勘所
Ⅶ 関連法規制・制度融資等
Ⅷ 業界団体
全体の構造としては、上記のような構成となっています。
②具体的な構造
ここからは具体的な内容を、サンプルを基に解説していきます。
【日本標準産業分類】が【2511】が示されています。
補助金申請時に記載が必要な場合が多いので、検索する手間が省けます。
【市場トレンド】に端的に、業界の課題が示されているので、時間がない場合は、まずはここをチェック!
【業種の特色】について、分かりやすく解説されているため、全く業界情報を知らない方でも、知識をここで得ることができます。
【規模感】について、理解をすることができます。具体的に特徴のある箇所について、グラフから読み取れる解説が入っているので、特徴をつかみやすいです。また、市場自体の課題点もここに述べられているため、現状支援をしている事業者の課題にもつながる場合があります。
【業界の動向】について、詳細に記載されています。ここでは、業種の機会や脅威について、記載がされており、外部環境分析に役立ちます。
【課題と展望】についての記載ですが、【業界全体の課題】について認識することができます。あくまで一般的な業界の課題が記載されています。
【対策案】について、複数の提案が示されています。企業規模に関係なく、全体的な対策が網羅されています。
【業務内容・特性】について、記載されています。ここの内容は、実際の行動計画を立てるときに活用することが可能です。
【業務内容・特性】の中に製造工程があれば、業務効率化につながらないかの知識として活用できます。また、流通経路もわかれば、どこかボトルネックであるかの材料として、把握することができます。
【財務諸表の見方】は規模別の決算書の平均値および経営分析指標が示されています。支援事業者の実態と比較する材料として活用ができます。
【経営支援の勘所】は、非常に重要なポイントをまとめたものです。この業種の急所ともいえる論点が書いてあるため、現在の課題を解決する直接のポイントになります。
【関係法規制・制度融資等】は業界に関係する法律上の規制が網羅されています。制約条件を事前に知ることが可能です。
【業界団体】は、検索することで有効なデータなどが出てくる場合が多いです。ここに示されているサイトは一度、検索しておくことが重要です。
業種別審査事典の構造はどの業界・業種も同様の構成で成り立っています。内容は執筆する専門家によって、重要な点を掘り下げられていますので、実際には各業種の情報を精査する必要があります。支援している事業者の事業計画に役立つ部分だけを引用し、課題解決に導くことが重要です。
具体的にどう使うの?
ここからは、具体的な事業計画策定のフォーマットをイメージしながら、業種別審査事典の活用についてポイントを解説していきます。
事業計画への落とし込み①
もし、経営支援の新人の方であれば、初めての事業計画策定の参考になると考えてますので、要チェックです!
事業計画策定については、例として以下の構成とします。
- 企業概要
- 市場動向と顧客ニーズ
- 自社や自社の提供する商品・サービスの強み
- 経営理念
- 経営課題
- 経営方針・目標と今後のプラン
- 実施のための体制
- 実施スケジュール
- 期待される効果
まず事業計画を策定するにあたり以下の縛りを置きます。
- 極力、短く分かりやすく、一目でわかるくらいの内容にする
- 法的な制限を意識する
- 引用文をダラダラ書かない
事業計画策定の前提として、【利害関係者が見てわかりやすい】という視点が重要です。自分の会社の人間だけが分かる内容であれば、事業計画としては破綻しています。
次に、業種の関連法規制を業種別審査事典より確認します。法的な規制や慣習的なタブーなど業種には存在しますので、提案する内容がそもそも間違っていないかを確認をしておく必要があります。
また、これはあるあるなのですが、引用文をまるごとそのまま書く方が多い傾向があります。2次情報は、今回の課題解決を導くための内容に絞り、ダラダラ書かないことがポイントです。
それでは具体的に活用例を解説していきます。
1 企業概要
(1)沿革
まずは自己紹介。支援事業者の創業年など、基本情報を記載。ここは業種別審査事典ではなく、経営者独自の情報を記載します。
次に業種の特色について記載をします。
業界について詳しい人はほとんどいません。業種別審査事典より引用し、業界の特色を簡単に説明することが重要です。補助金の審査をしている人に対しても、どのような業種の特色があるかをここでわかりやすく説明することで、前提知識を植え付けることができます。
(2)財務状況
①事業者の財務状況
事業者の財務状況の詳細は決算書で確認できますので、ここでは端的に重要な部分だけを抜粋しておくことがポイントです。いきなり損益計算書から見るの専門家は少ないと思います。まずは貸借対照表の純資産の状況を最初に確認すると思いますので、現状の企業価値において余力がある状況か、ないのなら、今回の課題解決を通して、どのように数値が変化するかを意識しておきます。
企業概要の中に、財務の定量的な情報も簡略版でいいので、記載します。
業種別審査事典にはTKCの豊富な財務データから抜粋した情報があります。経営分析の観点から、自社の課題となる仮説を考察することが重要です。
- 収益性
- 効率性
- 安全性
- 生産性
- 安全性
上記の5つの観点から、今回の支援のゴールとなる指標を選択し、課題の仮設を立てます。
※これらの指標活用方法については、今後記事にする予定です。
2 市場動向と顧客ニーズ
(1)業界動向と地域商圏の特性
ここで【業界の動向】を引用します。
業種別審査事典の引用をし、書き出しの例としては「第15次業種別審査事典の○○業によると・・・」という内容で記載します。ポイントは長々と書かないこと。いろいろな方の事業計画を見て思うのですが、ここを長々と書いて、自社の内容が薄い場合が散見されます。あくまでも、業種別審査事典の情報は【2次情報】です。今回の課題解決に関係ある内容のみに的を絞ることが重要です。
「2次情報」とは、端的に言うと「誰かが集めた情報」であり、誰でも入手が可能な情報のことです。なお「1次情報」は、「自分で集めた情報」です。
グラフも引用することで、事業計画書の説得力が増しますので、1~2個程度、根拠資料として差し込むことがポイントです。
業種別審査事典には掲載されていない部分です。現在、事業者の置かれている商圏分析が必要です。ここは独自調査や、お住まいの行政関連データがあれば活用をします。ポイントとしては、ここの記載がない事業計画が散見されます。マクロな視点からミクロの視点まで説明することが重要です。
(2)顧客ニーズ
ここも同様に、業種別審査事典の業界動向から、情報を引用します。
既存市場は、業種別審査事典からの引用が活用できます。今回の事業計画時に、事業者の販路の状況を踏まえ、業種別審査事典から関連のある市場を記載します。ここでのポイントは既存市場で、どこに機会や脅威があるかの一般論を言及しておくことが重要です。
ここは業種別審査事典の情報では記載ができません。なお、記載できる場合もありますが、その内容は他の競合からが既に進出している市場である場合が多いです。ポイントは、今回の事業計画で、事業者が新たに取り組もうとしている市場について調査し、どれだけの需要があるかを記載することです。具体的な金額で表せる規模感も同時に記載することで、根拠資料として精度の高いものとなります。
ここまでは、いわゆる【外部環境】です。外部環境を記載する場合は、必ず事業者の事業環境においても言及することが重要です。繰り返しになりますが、業種別審査事典はあくまで2次情報であり、引用の際は必ず課題解決に関係のある内容のみ記載するようにしましょう!そのまま長々と記載しても、良い事業計画にはなりません。
3 自社や自社の提供する商品・サービスの強み
(1)経営理念
ここについては、言語化できていない事業者がたくさんいます。特に創業時であれば、経営理念そのものの意味さえ分からない場合があります。重要なことは、経営理念は社会問題の解決や、人々の幸福など、より高次の目的になっているか、支援者と事業者一緒に考える必要がります。
なお、当然ですが業種別審査事典から引用することはできません。
(2)自社や自社の提供する商品・サービスの強み
ここでは、業種別審査事典の以下の内容を活用します。
業種別審査事典に各業種の具体的な業務内容を記載されている箇所があります。一般的な業界の作業部分について理解することで、客観的に事業者がどこに強みを持っているかを炙り出すことが重要です。
以下に例を示します。
特に製造業の場合は独特の作業工程が存在する場合がありますので、業種別審査事典で情報を得ておくことが重要です。
強みを分ける方法として代表的なやり方は、【ヒト・モノ・カネ・情報】の4つの切り分け方です。見る側としてもわかり良いでしょう。上記は製造業ですので、この【ヒト・モノ・カネ・情報】を【4M】の視点で整理しています。これらの切り口を支援者が事業者と話す際に理解していれば、整理も早く、どの要素が課題解決にクリティカルヒットするかが認識できるはずです。
4Mとは、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)の4つの要素を指します。
なお、弱みは事業計画に直接書く必要はないと考えます。基本的には戦略として、【機会×強み=積極的攻勢】のクロスでいく場合が多いためです。ただし、場合によって【機会×弱み=弱点克服】に今回の課題解決の目的があるのであれば、明確に記載する必要があります。
「機会」「脅威」「強み」「弱み」を抽出し、次いで掛け合わせる【クロスSWOT】することで、課題解決策を導き出す手法。
事業計画への落とし込み②
続いて、経営課題からの活用を見ていきます。
4.経営課題
今回、事業者の目標とする内容に合わせて、経営課題の的を絞ることが重要です。
(1)目標とする企業像
今回の事業計画策定の目標を記載します。
例:今までの小規模事業者の生産性に囚われない少人数でも多品種「中量」の生産規模を実現できる一人生産方式を構築した差別化企業を目指す!
補助金申請の【事業計画名】にもつながる内容です。今回の経営課題の解決策が、最新の機械導入という手段であれば、【例:最新NC旋盤技術導入で多品種「中量」一人生産を提供する事業」となります。業種別審査事典の【対策案】で、近いものがあれば活用しますが、事業者の課題解決が方向性として異なる場合は、結果として、業種別審査事典に書いてある対策に繋がることを意識することもテクニックの1つです。少しわかりにくですが、業種別審査辞典の対策案はマクロの視点であることから、日本国の課題でもあります。つまり、これらの対策を解決する1つのベストプラクティス(成功事例)となる内容なら、【政策的加点】が見込まれるからです。
(2)課題
自社の現状分かっている経営課題について、全て書くことも重要ですが、直近で最も課題となるものに絞ります。
事業者の全体の課題を示す場合であれば、抽象度を上げて、ヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源全般での経営課題を設定します。直近の経営課題が明確な場合は、的を絞ります。例えば今回が機械導入という手段による、経営目標の達成であれば、経営課題を具体的なQCDに絞ります。また、付随して考えられる課題を設定します。ポイントはここで解決策も含めて課題として設定する方法です。具体的には以下に示します。
業種別審査事典の【課題と展望】の内容に結果的に、今回の取り組みがつながるというマクロの視点を持つことで、日本全体の同じ事業者が抱える問題の解決にもつながるという意識をします。事業者本来の課題解決は結果的に、日本全体の課題の何を解決する事例となるかを考えることが重要です。
5.経営方針・目標と今後のプラン(本事業の取組み)
(1)事業ドメインの設定
見る側によっては、事業ドメインの意味を知らない可能性がありますので、以下に端的に表現します。
①誰に
②何を
③どのように
誰に、何を、どのように、は少し勘違いをしている方もいるので、おさらいします。中小企業診断士の方なら、必須であった【エーベルの三次元事業定義モデル】です。
ここは単純にターゲットの設定です。具体的には、STPなとを活用します。
端的にいうと、s(セグメンテーション)で市場全体の把握、T(ターゲティング)で狙う市場の決定、P(ポジショニング)で他者と差別化という流れです。STについては、業種別審査辞典を参考にできます。ポジショニングはポジショニングマップなどを活用することで、自社の狙う顧客の根拠情報が固まります。
ポジショニングマップの例は以下のような図です。
勘違いしている方が多いのが、この「何を」です。「何を」と砕きすぎることで、単なる商品名を入れる方がいますが、「その商品の価値を含む」ことが重要です。「○○の価値を提供する○○(機械名)」だと端的にわかりやすいと思います。もしくは【価値】のみに絞ってもいいです。例:最新旋盤技術の導入で差別化し
ここはしつこいくらいに、話をしますが、単なる導入するモノだけが散見されます。そのモノがどんな価値を生み出しているのか、を明確に表現することが重要です。
ここは中小小規模事業者に特に起因する、大企業に真似のできない中核の強みです。元々備わっている強みである場合もあれば、今回の価値と融合することで生まれる新たな手法でも大丈夫です。事業者の【コアコンピタンス】が分かりにくいのであれば【VRIO分析】を活用することも1つです。
端的にいうと、【他社に真似できない核となる能力】。
「Value(経済的価値)」「Rarity(希少性)」「Inimitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の4つの観点から強みを導きだし、その企業に備わっている差別化能力を炙り出す手法です。
事業ドメインを誰でもわかりやすく落とし込んだものが、「誰に」「何を」「どのように」ですが、これらを設定するに至るまでに多くの分析手法があります。中小企業診断士や中小企業診断士受験生の方は、学んだ知識を実務で活かせる強みがあります。
ここで支援者の方に質問です。事業ドメインと企業ドメインの違いはなんでしょうか?
事業とキャッシュフローの関係性、ポートフォリオの組み合わせ方がわかり、企業の将来像について、短期間ではなく、長期間に渡って支援をする事業計画を立てる場合はこちらも加味する必要があります。ドメイン1つとっても、深くておもしろいですよね。
(2)具体的な取り組み内容
ここについては、前段の事業ドメインの内容について深堀をする内容です。
具体的な内容は業種別審査事典の業界の慣習や作業部分を記載している箇所や、【経営支援の勘所】からヒントを得ることが重要です。そのままでは活用できませんが、これらの要素を活用しながら、事業者への具体的な提案につなげることが可能です。
具体的な内容については、後の記事で私が実際に支援した事業者の内容を公開しますので、参考にしてください。※事業者からの了承済み。
6.実施のための体制
実施のための体制については、業種別審査事典に製造工程が掲載されている場合は活用します。ただし、ここでの実施体制は、販路開拓も関係あるなら営業、間接部門の作業効率化も関わるなら経理なども含むことがポイントです。
※上記は例です。ここがコアとなる場合はより詳細に組み立てる必要があります。
7.実施スケジュール
実施スケジュールについては、今回の事業について最も重要な内容や、必要に合わせて行動スケジュールも入れます。
このようなガントチャートを活用する方が、見やすいと思います。
次回は【期待される効果】について、解説をしていきます。
事業計画への落とし込み③
続いて、将来の展望について、解説をしていきます。ざっくりいうと、今回の事業計画の【効果】の部分になります。
■将来の展望【効果】
1.概要
ここでは、課題解決にあたって最も優先度の高い内容について、まとめます。どういう取り組みかの具遺体的な内容に加えて、定量的な目標数値も入れることが重要です。
最新NC旋盤機を導入し、一人生産方式による生産性向上により多品種「中量」供給ができる仕組みで差別化をすることで事業を実行します。20年培ってきた金属加工技術の強みに「新たなサービス」の付加価値が付くことで、大企業や同規模の企業とは異なる自社特優のポジショニングを確立できる効果が得られます。革新的サービスの提供で事業開始時の売上から軌道に乗った場合(5年後目標)の売上5,880万円の効果を目指します・・・○○(略)
今回の取り組む内容に加えて、その後の展望も含めると、より良いと考えます。
もし事業者が独自に思いつかない場合は、業種別審査事典の内容を参考に、現在の事業の状況を踏まえて、今後の企業像を検討することが重要です。
2.事業の成果が寄与すると想定している具体的なマーケット及び市場規模等
ここについては、前段の(2)顧客ニーズ・既存市場・新規開拓市場で説明している場合は重複するので記載しません。ただし、別途もっと深堀りをしてわかりやすくしたい場合は、具体的にポジショニングマップなどを挿入します。
重要なことは具体的な市場の効果について明記することです。ただ、市場の内容だけを記載しても伝わりませんので注意が必要です。
ここについては、業種別審査事典ではなく、会社の見込んでいる具体的な売上などを細かく計算し、現実的な数値として落とし込んでいきます。
3.本事業の成果の事業化見込み、費用対効果
(1)導入する具体的な内容の優位性による販路開拓
仮に機械を導入することを策とした場合、QCDの観点から優位性を述べます。ここは、前段で示した【課題→解決策】をもう一度、確認します。
前段で提起した内容について、それぞれ効果がどうかを記載。
- 製品・品質:機械を導入した場合の効果
- 価格・コスト:機械を導入した場合の効果
- 販路・納期:機械を導入した場合の効果
これらは【商品の価値】にフォーカスしていることも重要です。なお、戦術レベルの切り口は売上増加が目的なら、4P、機械導入による生産性向上などはQCDの観点がおすすめです。もしくはどちらも組み合わせることも1つです。
Product(製品) Price(価格) Promotion(プロモーション) Place(流通)の頭文字をとったもので、マーケティングを構成する4つの要素のこと。 マーケティング戦略において、4Pを組み合わせて自社にとって望ましい反応を市場から引き出すことを、「マーケティング・ミックス」と呼ぶ。
業種別審査事典の経営支援のポイントの中にヒントになりそうな内容があれば活用をすることが重要です。
(2)○○導入に伴う革新的サービス提供による優位性
今度は、【手法】に着目します。ここは完全に事業者の完全な差別化によるの能力となりますので、業種別審査事典にはない中核的な強みを具体的に説明します。
以下は、私が以前支援した事業者の生産方式について、記載したものです。
前職が、厨房で製造の指導をしていたのですが、この技術は飲食業だけでなく、製造業にも転用できると、この時の支援で気づきました。支援者の経験が多ければ多いほど、事業者の頭の中にある技術をより多く形にできるようです。
(3)プロモーション活動
売上拡大の場合は以下を例に掘り下げます。
- 営業活動
- 看板の設置
- ホームページの作成
事業計画によって、中心となるテーマがありますので、適宜どの内容を掘り下げることで効果を得ることができるかを検討する必要があります。
(4)5年間の目標売上高
今回の事業計画に係る市場での売上高を設定します。
ここでは事業者のトータルの売上ではなく、市場ごとの売上目標に切り分けることがポイントです。
(5)投資の経済的効果の可否の判定
機械を導入する場合は費用対効果の定量的な説明で主に以下の方法があります。
- 回収期間法
- DCF法
回収期間法の方が、短時間で予測を立てることができるので、時間がない場合はこちらがおすすめです。より精度の高い費用対効果を炙り出したい場合はDCF法を活用します。
何年間で投資額が回収できるかを検討して、投資するかどうかをこの期間によって見極める手法です。 社内で決めている期間よりも投資額が回収できる期間が短いときは投資して、長いときは投資しないようにします。
DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)は、事業計画書からその会社が将来どれくらいの利益(フリーキャッシュフロー)を得るか計算し、将来の不確定性やリスクを「割引率」として考慮し、どのくらいの期間で投資回収ができるかを計算する方法。
よくわかりません。という方は、中小企業診断士などの専門家へご質問ください。ただし、ここまでの事業全体の要素がわかっていないと計算できませんので、より現実的な組み立てが重要となります。以下は例です。※資本コストを1.01%に設定した場合
4 5年間の事業化スケジュール
最後に事業計画の先、5年の予定について記載をします。
(1)行動計画
(2)会社全体の計画
ここまで、具体的に業種別審査事典を活用しながら、事業計画策定について解説しましたが、なかなか全体をとおして、読んでいかないと分かりずらいかもしれません。
業種別審査辞典を活用した事業計画例
最後に、これまで業種別審査事典を活用した事業計画について、過去に実際に私が支援した事例について公開します。なお、支援した社長からの了解は得ています。
事業計画例は【ものづくり補助金】の【創業者】で採択をされた事例を出します。当時の公募要領の建付けで、創業者が採択されることは、かなりレアリティの高い事例と思いますので、ご参照ください。
※主要な箇所を抜粋して、公開します。
※創業者であるため、損益計算書ベースがなかったため、経営分析は実施していません。
ここの社長へ支援したのは、もう5年も前の話になります。このモノづくり補助金が採択され、500万円キャッシュが創出できたので、その後、計画を前倒しで第2段階に突入したということです。補助金が成長のための起爆剤となり、2~3年の成長を促した良例だと考えています。
当時は、まだ中小企業診断士受験生時代だったので、なにかと足りない部分もあるとは思いますが、専門家を入れなくても、このレベルの支援なら、商工会の経営指導員で可能ですので、ぜひ経営者の方は商工会へ無料相談へ!
商工会の経営指導員に相談だ!
「前勤めていた会社の社長から、ものづくり補助金を活用したほうがいいって言われたんですが・・・」「そうなんですね。・・・?創業ですか?」「はい。開業届の書き方教えてもらうついでに商工会に相談しようと思って」「今まで、創業者でものづくり補助金申請って聞いたことがないですね。ただ、要領には創業だめって書いてないから、面白そうだしやってみましょうか。」「お願いします!」とこんな感じで始まった支援。【創業者での採択率は0%に近いから期待はしないように】と念を押し、事業計画策定を社長と開始しました。「この導入予定の機械って、どんな性能で、どんなことができるんですか?」「この機械はこんな特徴がって・・・」「なるほどなるほど、なら今何もないこの小屋のどこで、動線は?」「小屋って言わないで。笑。」というように現場で相談と打ち合わせを重ね、結果は採択。「採択ありがとうございます。」「いやいや、喜ぶにはまだ早いです。」「採択はされたんですが、きちんと実行して、通帳に入金されるまで油断はしないようにしてください」「たまに、採択うんぬんに一喜一憂する方がいますが、それは間違いですよ。」「そうなんですね。これからもお願いします。」。それから機械導入や実際の現場のレイアウトを話ながら、営業開始。「受注が想像よりいっぱいきてて、毎日早朝から深夜までしてます。」「さすが!思ったとおりですね。経理とかの間接業務とかは商工会がしますので、社長は自分の最も得意なことに集中してください。」「営業ですか?笑」「そうそう。笑。」。それから無事に500万入金のお礼に社長が来る。「ありがとうございます。正直、サラリーマンで貯めたお金はしっかりあったんですが、冒険だったので、本当に500万円は助かります!」「良かったです。で、その500万円どうしますか?」「どうするって・・・生活費とか?」「ダメです。元々そのお金って、無かったものですよね?この前借りた公庫の借入金を繰上げ返済して、月々の返済を薄めてリスクを下げるか、次の投資に使って、成長速度を速めるようにしてください。」「まじっすか?厳しー」「税理士とかはお金は持っていた方が良いというかもしれません。もちろん、それは社長の決断ですが、今までの経験則をいうと、お金は優秀なツールです。私に関わった以上、有効な提案はさせてもらいますね。」「鬼やなぁ。笑」なんて、やり取りがあって、私がこの町を出た数カ月後に、500万円で次の機械を導入して、さらに生産性が上がり、売上が上がり続けているという嬉しい報告がありました。小規模事業者の社長には優秀なブレーンがなかなかいません。それならば、優秀なブレーンとなる人に相談するのも手です。そして、そんな存在が、あなたの町に無料で相談できる場所がある。それが商工会です。必ず、今の視野だけでは得られないことに気づかせてくれます。そして、それは支援する側にとってもしかりです。
導かれる人は導く人でもある
まとめ
【え!使ってないの?】業種別審査事典【事業計画策定への活用】コンプリート版、いかがだったでしょうか?
業種別審査事典の大きなメリットは以下となります。
- 事業計画策定の業務効率化
- 事業計画の質の向上
事業者の方や、経営支援をしている方ならわかるはずですが、質と量を同時に上げることは至難の業です。ただし、この業種別審査事典を上手く活用できれば、それも可能となります。
今回も記事を読んで頂き、感謝です。また次の記事でお会いしましょう!