「今年の10月からインボイス制度が導入されるけど、士業にも関係あるのかな?」
「いやいや、まだ駆け出しの新人だし、登録は先でいいんじゃないかな?」
「私はほとんど支援機関が取引先で、一般企業じゃないから大丈夫じゃないかな?」
ちょっと待ってください!
インボイス制度は事業者の大小に関係なく、全ての事業者に影響する制度です。それは士業にとっても同じです。
中小企業診断士で商工会のインボイス制度を担当している私が、具体的なインボイス制度に係る専門家派遣について記事をまとめました。
- 専門家派遣って?
- インボイス制度?
- どんな影響がでるの?
- 登録のメリット・デメリット
- 商工会の相談員がおすすめ
「インボイス制度に係る専門家派遣の問題」は、公的支援機関を中心に活動している士業にとっては死活問題になりえます。
この記事を読んで頂ければ、インボイス制度登録の判断に加え、専門家派遣による収益増加につながること間違いなし!
中小企業診断士のグレート☆セバスチャンです。私のプロフィール詳細はこちら。
専門家派遣って?
突然なんですが、士業のみなさんは「専門家派遣制度」についてご存じですか?
技術や技能をはじめ、企業の体質改善・強化を考えている小規模企業者の方々に、商工会連合会・商工会議所に登録されたエキスパート(専門家)を直接派遣して、ハード・ソフト両面から具体的・実践的な助言を行うことにより問題解決を図る制度です。
分かりやすく言えば、「支援機関からの依頼に対し、事業者に診断と助言をすること」です。
「そんなのわかってるよ!」
と士業の方たちからの声が聞こえてきそうですが、この専門家派遣制度を本当にうまく活用しているのでしょうか?
中小企業診断士で経営指導員である私から見ると、「士業の方はもっと支援機関に対して営業をかけていいのでは?」ということが結論です。理由は以下です。
- 専門家派遣の予算
- 依頼士業の固定化
- 地方の人材不足
1つずつ解説していきます。
「専門家派遣の予算」ですが、主に以下の構成となっています。
- 市町村補助金
- 県補助金
- 国補助金
特に活用の多いのは「県補助金」です。市町村補助金については、地域によって有無があります。そして最近注目して欲しいのは「国補助金」です。
士業からすると、どこの財布から謝金をもらっても、専門家派遣でしかありません。しかし、新型コロナウィルス感染症以降、中小・小規模事業者を中心に経営が悪化しているため、専門家派遣への予算は数十億単位で組まれていることが現状です。士業にとってはまさしく稼ぎ時なんです。
「支援機関は依頼先が固定化」は、支援機関は自ら積極的に士業を探す団体ではありません。一定の信頼を得ているベテラン士業の方に、ほぼほぼオファーが集中します。しかし、現場サイドからすると、同じような研修になってしまう問題もあります。
またその時の「外部環境に強い士業」であれば、いったん信頼を得られれば、その年度に関しては、「ひっぱりだこ」になる傾向があります。
答えは簡単です。支援機関は現在、補助金の申請等で異常な繁忙期が続いています。毎回、あれこれ士業を変えるよりも、同じ人に頼んだ方が効率が良いからです。
つまり、「いかに外部環境の課題を誰よりも先に支援機関に提案するか?」が稼ぐポイントなんです!
田舎になればなるほど近くに士業自体がいません。
競合の多い都市部で戦おうとするよりも、田舎であればあるほど、ニーズがあります。特に、離島の多い県は支援に苦慮しています。
専門家派遣は、謝金以外に旅費も実費が支給されます。47都道府県を販路と考える柔軟さが稼ぐポイントなんです!
「なかなか専門家がいないんです。」
というお声が支援機関からの声が多くあります。専門家がいない訳ではなく、専門家がいち早く外部環境の変化に気づいて、勉強し、提案していないだけなのかもしれません。
そして、今注目すべき「外部環境の変化」は何か?
「インボイス制度の支援」なんです!
インボイス制度って?
「インボイス制度」の基礎については、特集記事を組みますので、具体的には以下を参考にしてください。
実務的な観点でいけば「インボイスに登録しなければ、取引先が仕入税額控除ができなくなるため、事業者は取引を切られる可能性がある」という点です。
もう1つ重要なことは、「インボイス登録によって、免税者が課税事業者になる」という点です。簡単にいうと、今まで消費税払わなくて良かったけど、消費税を払わなくてはならなくなります。免税事業者にとっては実質的に「支出の増加」になります。
「よし!なら、インボイス登録の支援をしなければいいんだね!」
「でも、税務分野は専門じゃないしなぁ。尻込みするよね。」
と思っている士業の方にお伝えしたいのは「インボイス制度」に係る支援には以下の観点があることです。
- 税務指導
- 経営改善指導
1つずつ解説します。
依頼事業者に対し、インボイスの概要を説明し、経理上の処理について、指導する。消費税の税務知識や制度会計上の簿記知識が必須となるため、税理士のフィールドといえる。
依頼事業者に対し、インボイスの概要を説明し、経営上の問題について、指導する。インボイス登録によって、「実質的に支出が増加する=利益の減少」となるため、価格転嫁対策や売上向上策を診断・助言する必要がある。税理士外の全ての士業のフィールドといえる。
はっきりいいます!中小・小規模事業者の経営者が一番に興味があることは「インボイス制度」自体ではありません。「収入が減ること」です。
次に知人の経営指導員たちのヒアリングに基づく独自調査に基づく結果をご覧ください。
「インボイス制度」に関する専門家派遣は現在、「税理士」が95%です。中小企業診断士が3%、その他士業が2%です。ほとんどが、税理士による「税務指導」だと考えれます。
それに対し、「インボイス」だけでなくその他の「全ての相談を含めた相談件数」に対応した士業の割合です。
お気づきいただけたでしょうか?
「インボイスの相談」以外のほとんどの相談は「中小企業診断士」が担っているということです。しかし「インボイス制度」の相談は税理士が9割以上。
つまり税理士による「税務指導」は進んでいますが、「経営改善指導」ができていないんです!逆に言えば、「インボイスに係る経営改善指導」にはたくさんのニーズがあるということです。
最後に、現在大きなニーズのある「相談員の配置」についての割合です。「相談員配置」については、後ほど解説していますので、参考にしてください。
相談員の配置は「中小企業診断士」が全体の8割近くを占めています。次いで「行政書士」が約2割です。「中小企業診断士」だけでなく、「行政書士」にも商工会の業務は今、チャンスとなっているんです!
今からでも十分間に合います。「インボイス制度の影響を乗り越えるための経営改善の提案」というテーマで、支援機関にアプローチをかけてみてはいかがでしょうか?
士業には、多くの可能性があるんだね!
そうだ!「資格」は重要だ!
突然なんですが・・・すいません意外でした。「行政書士」の皆様にはお詫び申し上げます。笑。経営指導員を長年していると、まず専門家派遣で浮かぶのが「中小企業診断士」、「税理士」、「社労士」です。この資格保有者が「3大資格者」だと思います。しかし、数年前に、女性の行政書士さんが訪ねてきて対象事業者の事業計画を立案をしていました。その時は、内容の構造化が甘かったので添削したのですが、すごく素直な方で、有料級のテクニックをたくさんお伝えしました(それはそれで、問題になったのですが、いずれかお話います)。しかし特に際立つ強みは「文章力」。普段から法文書を扱っているから上手!「行政書士は申請書策定において、中小企業診断士業務と相性が非常にいい」と感じました。上の参考グラフのように、行政書士へのニーズが高まっています。さらに「ひっぱりだこ」になるように、「中小企業診断士」のダブルライセンスをおすすめします!
資格が「ある」か「ない」か?2つに1つ
専門家派遣の罠
「よし!インボイス制度で今年はガッチリ、やってやるぞ!」
と思った方に悲報です。そう!それは、あなた自身が「インボイス制度」の導入によって、呼ばれなくなる可能性があるという事実です。
「いやいや長年、支援機関から呼ばれているお金じゃなくて信頼よ。信頼。」
確かにさきほどお伝えしたように、支援機関から信頼を得ている士業の方は固定化する傾向があります。
はっきり言います。それは9月末までです。
「インボイスが始まったら、専門家の請求書いるよね?」
というご質問がよく支援機関からあります。支援機関は今まで慣習上、専門家から請求書自体をもらってない場合も多々あります。しかし、もうそうは言ってられません。請求書を作ることが求められます。
「インボイス始まったら、登録してない専門家は仕入れ税額控除できないよね?」
残念ながらそうです。法律ですので。止めることはできません。
「・・・なら、事前にインボイス登録の有無聞くしかないよね・・・」
この会話の意図することは、もうお分かりいただけたと思います。
答えは簡単です。士業からインボイスがもらえなければ、元々財源的に厳しい支援機関はお金の問題から切らざるを得ないからです。そこは信頼だけでなく、「現実的なふところ事情」があるんです。少子高齢化の時代、潤沢な資金で回っている支援機関は一部の都市圏に限られます。
「えー!なら、絶対に登録しないとだめなの?」
いいえ、違います。登録するかしないかは事業者の判断です。そして、同様のことを支援する事業者から聞かれます。支援事業者にとって「登録した方が良い」か「登録しないほうが良い」の2択です。状況によって、診断と助言は異なります。
「そもそもインボイスに登録していない専門家にインボイスの指導されるのは・・・」
もちろん、元々一般企業の「顧問先」をたくさん抱えて売上の高い士業の方は問題ございません。既に登録済みだと思います。また、もう高齢で廃業を検討されている方はこの機会に廃業を選択する士業の方もいるかもしれません。
しかし、これから士業として独立する方や、現在駆け出しの士業の方には、インボイス未登録は死活問題になる可能性がありますので要検討です。
なぜなら、よほどの専門分野の強みを持っていない限りは、士業の方たちの最初の入口は支援機関のオファーが多いからです。そして、そこから紹介してもらい、顧問先を構築していくことも多いはずです。
外部環境の脅威に適応するために、士業にとってはインボイス登録は「転ばぬ先の杖」かもしれません。重ねて言いますが、登録するかしないかは自由です!
絶対、登録しなきゃだめなの?
登録するかしないかは自由だ!
士業注目!3つのテーマ
「よし!インボイス登録して、もっと事業収益を伸ばしてやる!」
というポジティブシンキングの士業の皆さんに本年注目して欲しいのは「3つのポイント」があります。
- インボイス制度
- 電子帳簿保存法
- IT導入補助金【リンク】
10月に「インボイス制度」が開始されますが、「電子帳簿保存法の義務化」が2024年より開始されますので、どちらも重要なテーマです。どちらも同時に説明できる専門家が最もニーズが高いです。特に「電子帳簿保存法」はハードルが下がりましたので、取り組みやすいと考えられます。
「IT補助金」は現在、申請にあたりベンダーを挟むので、ベンダーとのつながりがある士業の方は集中的に支援機関や事業者に進めることで、他の士業と明確に差別化ができるチャンスです。
「IT補助金は経営指導員はベンダー紹介するくらいが実態だから、直接もっと営業をしてくれる人が欲しい。」
との支援機関関係者からのお声がありました。本年度は「みらデジ【リンク】」の経営診断チェックが要件になっていることもありますので、支援機関が積極的には支援しづらいのが現状です。特にハードウェアの購入もできる内容になっていますので、この分野に長けている士業の方はぜひチェックしてみてください。
支援機関の仕事 4選
「具体的に支援機関の仕事って、どんなものがあるの?」
主に以下の3つです。
- 専門家派遣
- 講習会
- 研修会
- 相談員配置
「専門家派遣」は簡単に言うと「特定のいち事業者に特定の場所で数時間、診断と助言を実施する」ものです。
「講習会」は「事業者の集団に対して、数時間講習会をする」ものです。「研修会」は「支援機関の職員に対して、数時間講習会をする」ものです。
「相談員の配置」は「商工会もしくは商工会議所に特定の時間、常駐し、不特定多数の事業者の相談にあたるもの」です。
ベテランの士業の方でも知らないのが「相談員の配置」ではないでしょうか?本事業については昨年度より、「事業環境変化対応型支援事業【リンク】」という事業により設置可能となったものです。予算規模は他の事業の数十倍です。
この「相談員配置」については後ほど解説します。士業にとっては、大きな利益になるチャンスなんです!
謝金相場の実態
「支援機関の謝金相場って、各都道府県で違いってあるの?」
士業の方にとって、専門家派遣や講習会は大きな収益の柱です。主な相場以下になります。
専門家派遣・相談員配置 | 8,000円~15,000円/1時間 |
講習会・研修会 | 50,000円程度/1回 |
「専門家派遣・相談員配置」は平均で全都道府県が1時間10,000円程度が相場です。「講習会・研修会」は1回(約半日)で約50,000円が相場のようです。
今、士業を目指されているみなさんは、この謝金についてどう思いますか?そして、この不景気な時代にどんどん支援機関や行政機関のオファーは増え続けています。しかし、実態は積極的に活用している士業は少ないイメージです。
「士業」を目指すことは、考え方によってサラリーマンの給与を大きく超える可能性があるんです!
相談員の配置がおすすめ
突然ですが、士業のみなさんは「商工会が全国にどれくらいあるか」ご存じですか?
約1650カ所です!
全国にこれだけの数がある支援団体って他にご存じですか?なにが言いたいかといいますと・・・
約1650の販路がある!
それでは、全国の事業者の会員数はどれくらいあるのでしょうか?さっそく答えです。
約80万社
そうです!相談を受ける可能性の事業者が80万社あるということです!
現在、全国の中小・小規模事業者数は約358万社です。その約1/3が商工会の会員ということになります!これを聞くと、士業のみなさんは「商工会」の存在が大きなものだと気づくと思います。
そして昨年度より始まった「事業環境変化対応型支援事業」では、この全国の商工会もしくは商工会議所に「相談員の配置」が可能となりました。しかし、有効活用できている商工会は少ない。原因はなんなんでしょうか?答えは「人手不足」だからです。
商工会・商工会議所の国からの委託事業。これまでの事業との違いは「人の設置」ができることです。最近は「新型コロナウィルス感染症」や「物価高」そして本年は「インボイス制度の導入」と、事業者の経営環境は流動的に変動しています。その中で、持続化補助金やものづくり補助金、事業再構築補助金などの申請事業に加え、日々の町づくりを含めた業務と商工会や商工会議所の現状のキャパシティを大きく超えています。士業の方たちが、常勤もしくは週に数回、最低でも月に1回、相談員として来てもらえれば、より質の高い支援ができると考えられます。相談員として診断と助言を行うことで、自らの顧客獲得にもつながる相乗効果が得られるはずです。
「相談員」には、専門家や商工会のOBやOG、派遣社員まで様々です。その中でも、専門家の配置が圧倒的に少ないんです。
現実的な話をします。謝金相場を思い出してください。週最低でも3回、3時間、この仕事をすればいくらになるでしょうか?
各単価×客数
考え方は至ってシンプルです。客単価は1万円/1時間、客数は1650です。
「でも、商工会に知り合いいないし、どうやったらいいかわからないよ!」
という方におすすめなやり方が1つあります。それは「事業者として、商工会の会員になる」ということです。これは以前から不思議に思っていたのですが、あらゆる士業の方が商工会会員になっていないんです。
「会費がかかるじゃないですか!」
商工会の会費の相場をお教えします。年会費12,000円程度(1,000円/月)です。どんな広報を打つよりも投資効果が見込めるはず。
商工会の会員になって、そこの経営指導員と仲良くなって、会員として仕事を受ける、考え方は至ってシンプル。顧問先を取る単価よりも低いですが、何度も断られて、提案を繰り返すよりも、成約率は高いと考えられます。
利益率×回転率
どちらも重要なはずです。商工会は、みなさん士業の積極的なアプローチを待っています!
まとめ
【選定は始まってる!】インボイス制度【専門家派遣の罠】の記事いかがだったでしょうか?
「インボイス制度」は支援する事業者のみの問題ではありません。支援する側である士業にも大いに関係があります。そして、その外部環境にどう収益構造を変化して対応させるかが重要なんです!
時代の流れに気づくか、気づかないかは
あなた次第です!
この厳しい時代、一生懸命事業を営んでいる事業者にために、あなたが必要です!
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それでは、また次の記事でお会いしましょう!読んで頂き本当にありがとうございました。