突然ですが・・・
「ECRSの法則って、試験で出るけど実務でどう使えばいいの?」
「排除・結合・再配置・簡素化って、何となくは知ってるけど、具体的に説明できない……」
そんなお悩み、ありませんか?
おはようございます。経営指導員&中小企業診断士のセバスチャンです。
今回は、そんなあなたに贈る「ECRSの法則」について、実際の経営支援現場に20年以上携わり、年間100件以上の事業者支援を実施している私の経験を基に、わかりやすく解説します。
この解説を学べば、試験で確実に得点できるだけでなく、現場で即使える“改善の武器”になること間違いなし!
ウォームアップ:理解度チェック5問
まずは、ウォームアップで基礎力をチェックしましょう!
問題1(基礎知識)
ECRSの法則における「E」は何を意味する?
A. 省略する B. 入れ替える C. 排除する D. 合理化する
答え:C
解説:Eliminate=排除。無駄な工程や重複作業を完全に取り除く。
問題2(分類の応用)
作業をマニュアル化して誰でもできるようにするのは?
A. 結合 B. 再配置 C. 簡素化 D. 排除
答え:C
解説:Simplify(簡素化)は、作業手順を単純にして誰でも実施可能にする工夫。
問題3(実務的視点)
オーダーシステムをタブレットに変更した飲食店の改善は?
A. 排除 B. 結合 C. 再配置 D. 簡素化
答え:A
解説:店員によるオーダー取り工程を排除した例。
問題4(過去問類似)
棚卸作業で部品を品番順に並べ直す改善はどれ?
A. 結合 B. 再配置 C. 排除 D. 簡素化
答え:B
解説:Rearrange(再配置)は、順序や動線を最適化する考え方。
問題5(事例):2人で行っていた検品作業を1人でまとめて行うようにした。
A. 排除 B. 結合 C. 再配置 D. 簡素化
答え:B
解説:Combine(結合)=類似作業を1工程に統合。
【試験で問われるポイントまとめ】
- ECRSの各要素の意味を正確に理解しているか
- 業務改善の順序として「排除→結合→再配置→簡素化」の流れ
- 各改善ステップに合った実例を答えられるか
- 他のフレームワーク(IE手法など)との関連性を理解しているか
ECRSの法則とは何か?
ECRSの法則とは、業務やプロセス改善における優先順位の考え方で、
- Eliminate(排除):不要な作業・手順を取り除く
- Combine(結合):似た作業や工程を一つにまとめる
- Rearrange(再配置):順序やレイアウトを入れ替える
- Simplify(簡素化):作業自体を簡単にする
という4段階で構成されています。

改善の順序としては、まず排除、それでも残る業務を結合し、配置や順序を見直し、最後に手順を簡素化することで、最大の改善効果が得られます。
「ECRSの法則」は、単なる理論ではなく、“業務のムダ”を見抜き、改善するための武器です。
中小企業診断士的ワンポイントアドバイス
ECRSのステップは、単独で活用するのではなく、実務上ではE→C→R→Sの順番で取り掛かることが非常に効果的です。

特に最初に「Eliminate(排除)」に着手することで、そもそも必要ない業務を削除し、その後に残った業務を「結合」「再配置」「簡素化」していくことで、効率化のインパクトが最大化されます。
この法則は、製造業に限らず、サービス業・事務業務・ITシステム運用など、あらゆる業種で応用が可能です。「ECRSの法則」は、単なる理論ではなく、“業務のムダ”を見抜き、改善するための武器です。
Eliminate(排除) | 【な】くせないか? |
Combine(結合) | 【い】っしょにできないか? |
Rearrange(再配置) | 【じゅ】んばんを変えられないか? |
Simplify(簡素化) | 【か】んたんにできないか? |
【な】【い】【じゅ】【か】→【内需化】と覚えて、国内からの需要を重視する意味から語呂合わせで覚えると覚えやすいです。これなら、製造スタッフや他の従業員の頭にも入りやすい!
私は日常的に使用している!
有名企業での活用事例
ここでは、みなさんも馴染みのある有名企業の実例で解説します。
トヨタ自動車
トヨタは世界的に有名な「トヨタ生産方式(TPS)」を確立しています。このTPSの柱の一つがECRSの「排除(Eliminate)」に他なりません。
たとえば、過剰在庫や手待ち、不要な移動といった“7つのムダ”を徹底的に排除。結果として、「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ作る」ジャスト・イン・タイム生産を実現し、在庫削減と生産リードタイムの短縮を両立させています。

また、組立ラインのU字型配置による動線の最短化(Rearrange)や、異なる工程を一人の作業員に集約させる多能工化(Combine)も進められています。さらに、新人教育や作業標準のマニュアル化(Simplify)によって、技術の平準化と品質安定化も徹底されています。ECRSの全要素が実践されている好例です。
良品計画(無印良品)
無印良品を展開する良品計画では、店舗運営の全工程を細分化し、ECRSの考え方をベースに継続的な業務改善を行っています。
たとえば、店長やスタッフごとの裁量に依存していた商品発注業務を「MUJIGRAM(ムジグラム)」と呼ばれる詳細な業務マニュアルによって簡素化(Simplify)し、業務の属人性を排除(Eliminate)しました。

また、業務フローの見直しにより、レジ締め作業や在庫確認のプロセスを一元管理の仕組みに統合(Combine)。さらに、店内の陳列導線を購買行動に合わせて変更するなど、作業の再配置(Rearrange)も実施しています。これにより、新人スタッフでも即戦力として働ける仕組みを整え、生産性と顧客満足の両立に成功しています。
星野リゾート(宿泊業の再配置モデル)
星野リゾートでは、業務効率と顧客満足の両立を目指し、ECRSの「再配(Rearrange)」を積極的に実行しています。
たとえば、チェックイン時の案内業務を分業せず、1人のスタッフが最初から最後まで担当する“ワンストップ接客”を導入し、接客動線を短縮。これは作業の結合(Combine)にも該当し、スタッフ数の削減とサービス品質向上を同時に実現しています。

さらに、従来は電話やメモで行っていた清掃・チェックアウト連絡をスマートフォンとタブレットの連携で自動化し、情報伝達の時間的ロスを排除(Eliminate)。業務フローを視覚的に共有することで、誰でも同じクオリティのサービスを提供できるようにしています(Simplify)。
これらの企業は、ECRSの各要素を理論にとどめず、実際の業務フロー・サービスプロセス・組織設計に反映させることで、顧客満足・生産性・効率性のすべてをバランスよく追求しているのです。
実務事例:金属加工業
以前、私が支援した金属加工業は、従業員ゼロからスタートした個人事業者でありながら、ECRSの法則を巧みに取り入れ、1人で多品種中量の生産を実現する体制を構築しました。
支援の背景
代表者は20年以上の加工経験を持ち、多能工としてのスキルに加え、営業や発注・在庫管理も担っていた実績を持つ人物です。しかし、創業当初は工場の生産効率が低く、段取り替えや作業負担の重複、紙帳票管理による手間とミスなど、多くの非効率が存在していました。特に「1人ですべてをこなす」ことが前提となるため、工程全体の最適化が急務でした。
ECRSを用いた実務的アプローチ
以下は、ECRSを具体的に支援に活かした内容です。
Eliminate(排除)
無駄な検品工程や紙ベースでの帳票類を廃止し、クラウド上での受発注・作業管理へと移行。さらに、従来は個別に行っていた見積・請求処理もテンプレート化し、手間を削減しました。
Combine(結合)
事務作業と生産管理のシステムを一体化し、作業記録から在庫・仕掛情報まで自動反映される仕組みに。これにより、事務所⇔現場間の移動や二重管理を解消しました。
Rearrange(再配置)
工場内のレイアウトを見直し、工具・材料置き場・旋盤をU字型に配置。段取り替えを最短動線で行える設計とし、「材料を取りに行く→加工→バリ取り→検品→梱包」までが1人の旋回で完了する仕組みを確立しました。
私ここが肝だったんだ!
Simplify(簡素化)
最新NC旋盤を導入。対話式プログラミングが可能なNC旋盤より、未経験者でも短期間で操作可能となり、作業の属人性を排除。さらに、メンテナンス警告機能や自動給材装置(バーフィーダ)も搭載されており、無人稼働にも対応しています。
実行した支援内容
- 工場レイアウト設計図の作成と見直し
- デジタル帳票(見積・納品・受注)テンプレートの導入
- NC旋盤の比較選定・調達計画支援
- DX導入支援(将来的なIoT管理を見据えた段階設計)

成果と今後の展望 1人でも月間1,000アイテム以上を安定して加工できる体制を実現し、取引先からの信頼を獲得。今後は、旋盤3台体制による一人生産方式の拡張と、IoTによる工場のFMS(柔軟生産システム)化を目指しています。また、災害に強い立地を活かしたBCP(事業継続計画)も策定し、公共調達への対応力強化も進行中です。
実務&養成課程実習でも使えるワンポイント
この支援事例は、ECRSの4原則を「単なる改善フレーム」ではなく、設備選定・動線設計・IT化戦略・人材育成の各フェーズで活用している点に学びがあります。特に、1人でも生産性を最大化する設計思想は、他の小規模製造業にも応用可能な実践モデルとなります。
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ECRSの業務改善 一般的な事例
ECRSは何も製造業に限ったことではありません。ビジネスフレームとしてあらゆる状況で使用することができます。ここでは、製造業だけでなく、その他の事例についても解説します。
✅ Eliminate(排除)
- 不要な会議の廃止
- 重複チェック作業の削除
- 紙の帳票・伝票を廃止し、デジタル化へ
- 作業記録をスマホ入力に変更
✅ Combine(結合)
- 担当者と部門を統合(例:営業と事務)
- 検品と包装作業を一体化
- 1人で多能工対応する工程設計
- 顧客対応と請求書作成を一括処理
✅ Rearrange(再配置)
- 事務所内レイアウトを効率重視で変更
- 工場内をU字配置に再編
- 機械の配置換えにより歩行距離を短縮
- 作業手順を工程順に並べ替え
✅ Simplify(簡素化)
- チェックリスト方式で教育時間を短縮
- マニュアルをイラスト付きにして視覚的に理解しやすく
- タッチパネル導入で操作手順を簡素化
- 専門用語を減らし、誰でも理解できる表現に修正
バイアスに囚われない発想!
まとめ:ECRSの法則は“現場で使える武器”だ!
ECRSの法則は、中小企業診断士の一次試験対策として頻出テーマであるだけでなく、現場における業務改善の基本フレームワークとしても非常に実用的です。
- Eliminate(排除):「なくせないか?」を問い、ムダを取り除く。
- Combine(結合):「いっしょにできないか?」を考え、業務を統合する。
- Rearrange(再配置):「じゅんばんを変えられないか?」を検討し、効率的な順序に並べ替える。
- Simplify(簡素化):「かんたんにできないか?」で業務自体をわかりやすく・やりやすくする。
この記事で紹介したトヨタ・無印良品・星野リゾート・金属加工業の事例のように、ECRSはどんな業種でも応用可能な“汎用フレームワーク”です。
🔽 ECRSは単なる理論ではなく、現場で生きる知識。
🔽 試験でも活躍、実務でも活躍できる「最強の改善4ステップ」なのです。
商工会・診断士の支援現場ではこう使われている!
実際の支援現場でも、ヒアリングや工程分析の起点として 「まず排除できるものは?」 とEから始めて、C→R→Sへと順に見直すことで、無駄のない流れるような業務設計が可能になります。
「ECRSって、使えるな」と思った方は、ぜひ今日から自分の業務でも実践してみてください。
参考書
【独学におすすめの教材】
【最後の一押しテクニック】
【2次試験対策】
【実践で使うおすすめの本】