突然ですが、あなたはこう思ったことはありませんか?
「この新規事業、本当に投資する価値あるのかな……?」
「ROIって試験では出たけど、実務でどう活かすの?」
中小企業診断士養成課程に通い、実習に臨んでいるあなたなら、そんな疑問に直面したことがあるはずです。
おはようございます。経営指導員&中小企業診断士のセバスチャンです。
今回は、「ROI(投資利益率)」について、養成課程で実践的に学んだ内容を、診断士視点から解説します。
この考え方を学べば、経営の現場で「数字で語れる支援者」になれること間違いなしです!
1. 経営分析の基礎:5つの指標を押さえる
まずは経営分析の基礎となる「5つの指標」を復習しましょう。
分析項目 | 代表的指標 |
---|---|
収益性分析 | ROI、ROE、売上高利益率 |
安全性分析 | 自己資本比率、流動比率 |
効率性分析 | 総資産回転率、棚卸資産回転率 |
生産性分析 | 労働生産性、付加価値額 |
成長性分析 | 売上高成長率、営業利益成長率 |
💡【ポイント】これは決算書など「盤面上=結果」で判断するフェーズです。

この段階で中小企業診断士として重要なのは、「財務から現場の問題を見抜く力」。
最低3期分の決算書を分析し、企業の【癖】や【違和感】を感じ取る力を磨きましょう。
中小企業診断士的ワンポイントアドバイス
養成課程において、実習先に行く前に、事前に渡されることの多い「決算書類」。あなたは、その意味を理解していますか?ここでは、実際に私が実習先に行く前に実践していた内容を解説します。
「実態BS」への修正
与えられた決算書を、そのまま分析することも重要ですが、果たしてその決算書は真実を映しているのでしょうか?
決算書に書いてあるBS(貸借対照表)は、あくまで「公表用=お化粧済み」。
銀行や税務署に見せる用なので、「資産が多め」「借金少なめ」「黒字っぽく」見える工夫がされています。
でも、実際に経営支援で必要なのは「素顔=実態BS」です。
🛠 実態BSに直すテクニック3ステップ
【STEP1】ウソっぽい資産を削る(資産のマイナス修正)
- 📦 売掛金/棚卸資産の中に「不良債権」「死蔵在庫」がないか?
→ 回収できない・売れないものは資産ではなく「幻」です。
→ → 例:売掛金1000万 → 実態は700万 棚卸資産500万 → 実態300万 - 🏠 固定資産に「遊休資産(使ってない土地・機械)」がないか?
→ 「帳簿上は高いけど、今の市場じゃ売れない」ケースも多いです。
【STEP2】見えていない負債を足す(負債のプラス修正)
- 💰 「社長からの借入金」などが資本に化けてないか?
→ 実際は「返さなきゃいけないお金」なので、負債に戻す - 🔄 未払費用や簿外債務(リースや保証債務)を確認する
→ 特に中小企業では「決算後に払う予定だったお金」がBSにのっていないケース多し
【STEP3】資産-負債=純資産を再計算して「真の財務体力」を確認!
実態BSの完成!
まとめイメージ(例)
内容 | 公表BS | 実態BS |
---|---|---|
売掛金 | 1,000万 | 700万 |
棚卸資産 | 500万 | 300万 |
土地 | 2,000万 | 1,600万 |
社長借入 | 0円 | 800万 |
実態純資産 | +1,500万 | ▲200万 |
「黒字で健全な会社です!」→ 本当は「資産スカスカ、負債モリモリ…」だった!ということも。
「決算書は会社の履歴書。でも、現場はその“裏の顔”がすべて。」
決算書だけで判断せず、ヒアリングと現場確認で実態BSを構築できることが、真の支援者!

「当たり」をつける能力
「当たり」を付ける、または「見立てる」能力とは、「事前調査」と、いまままでの「経験」を重ねることで、現場に行く前に支援事業者の問題を特定する能力です。
もちろん、現場に行き、「違った」ということもありますが、「違った」ということを知ることで「他の方法」を特定できることにもなります。
この「当たり」をつける能力、皆さんはどれくらい活用していますか?
決算書は、結果数字が示されているだけではありません!経営分析の比率などで、その会社「癖」を見抜くことが重要。
意外に受講生で実践できていない!
2. ROIとは何か?財務の原理から理解する
ROI(投資利益率)は、財務分析における出発点であり、財務分析を実践に落とし込む最も重要な指標といえます。簡単にいうと「投資に対してどれだけの利益(リターン)が得られたか」を示す指標です。
計算式は:ROI=利益 ÷ 投資額
私は当時、ペアで組んでいた実習生と、この「ROI視点」を共有するルールを決めました。迷ったら、この基軸に戻るという意識だけで、ズレを防げます。
● ROIの分解式
利益÷投資額を、より支援現場で実践的に落とすには、下記の分解による理解が重要です。
ROI = 売上高利益率 × 資本回転率
- 利益率の改善:値上げやコスト削減による利益率アップ
- 回転率の改善:少ない資本で多く売る仕組みの構築
● 事例で理解
- 商品価格120円 → 利益は増えるが販売数は減る(利益率↑/回転率↓)
- 商品価格80円 → 利益は減るが販売数は増える(利益率↓/回転率↑)
✅ 「利益率」と「回転率」のトレードオフを理解し、バランスを取るのが経営戦略!
もっとわかりやすく言えば、「利益率を上げる経営」か「回転率を上げる経営」かという選択です。
たとえば、100円の商品を販売する場合、値段を120円に上げれば1個あたりの利益は増えます(利益率が上がる)が、価格が高いために売れ行きが落ち、販売数は減ってしまう(回転率が下がる)可能性があります。
逆に、価格を80円に下げれば、1個あたりの利益は減る(利益率は下がる)ものの、価格が安いため販売数が増え、全体の売上やキャッシュフローが伸びる(回転率が上がる)かもしれません。

このように、利益率と回転率のバランスをどう取るかが、ROIの最適化に直結します。経営判断においては、このトレードオフを理解し、戦略的にどちらを重視するかを選択することが求められます。
どちらも上昇する提案は【超一流!】
【参考】ROIの目安と評価基準
数値的な観点で以下を抑えておこう!
ROI(%) | 意味・評価 |
---|---|
100%以上 | 投資回収済。超優秀 |
50~99% | 利益あり。優秀 |
30% | 3年で回収ライン(最低) |
10%以下 | 資金繰りに不安 |
0% | 損益分岐点 |
マイナス | 赤字、要再考 |
※ 投資額や利益の定義は場面によって異なるため、比較時には統一基準が必要
3. ROIは経営判断の感度を高める
ここまでは、数値的な観点で解説しましたが、ROIは、単なる財務指標ではありません。
あらゆる経営者、そして優秀な管理者が大事にしている行動まで落とし込む指標なんです!
ROIの活用感覚とは?
繰り返しますが、投資(ヒト、モノ、カネ、情報)に対してどれだけの利益(リターン)が得られたか」を示す指標です。それを、経営者支援で、行動に落とすと以下になります。
- 労力や時間も「投資」と捉え、リターンとの関係を意識
- 「選択と集中」の判断基準として使える
- 「この仕事、本当にやる意味ある?」と問い続けるマインドを養う
●養成課程での活用ワーク例
養成課程での、実際の実習でも活用できます。皆さんの行動は、ROIによって最大化されていますか?質と量を良く考えて行動しましょう!
- 各業務に対して「目的・成果・投下リソース」を洗い出す
- 重複・無駄な施策の棚卸し
- ROIで業務の優先順位を可視化
ミーティングが目的化していないか?
まずは、班で良く陥りやすい状況を確認しよう!
- 情報共有だけのミーティング/目的・結論不明など
- 【ROI影響】人件費・時間が無意味に浪費され、意思決定スピードが低下
- 【研修での学び】“ROI視点の会議設計”ワークで、アジェンダ設定と代替手段の提案力を養成
ROIを下げる「5つの残念な班」
特徴 | ROIへの影響 | 診断士が学ぶ支援内容 |
---|---|---|
成果より遂行度重視 | 労力対効果の低下 | アウトカム評価の導入支援 |
配置の誤り | 無駄の生産 | 業務棚卸・工数分析 |
会議の目的化 | 時間・人件費の浪費 | ROI視点の会議設計ワーク |
班員への過剰な承認 | 遅延・士気低下 | 権限移譲マトリクス活用 |
班長が絶対 | 意思決定の誤り | 健全なフォロワーシップ支援 |
優秀な班は効果の最大化を意識
4. ROIの実務活用例
ここでは、具体的に実習先の支援企業への活用事例を解説します。
- 資金調達と経営判断
→ 出資者・金融機関に説明する材料としてROIが有効 - 業務改善と生産性向上
→ ROI=(成果 ÷ 労力・時間)として社内業務の可視化 - チームマネジメント
→ メンバーごとのROIを共有し、人材育成・業務効率化に活用 - 支援の現場
→ 診断報告書や提案資料にROIを数値で盛り込むことで説得力向上

中小企業診断士的ワンポイントアドバイス
ここでは、ROI型支援アプローチ(5ステップ)をまとめます。
STEP | 内容 | フレーム活用 |
---|---|---|
STEP1 | 業務・施策の棚卸 | ECRS、バリューチェーン分析 |
STEP2 | 成果とリソースの対応分析 | ROI、コスト効果分析 |
STEP3 | 集中すべき投資分野の特定 | SWOT、PM、VRIO |
STEP4 | 組織風土と意思決定構造への介入 | 組織診断、プロセス分析 |
STEP5 | KPI設計と運用 | SMART指標、BSC |
優秀な班は効果の最大化を意識
まとめ
ROIは「投資の成績表」ではなく、時間・お金・労力に対して成果を出せたかを測る“経営の羅針盤”です。
中小企業診断士を目指す者たちとして、数字を正確につかみつつも、目先の数字に踊らされず、「構造的な課題」と「戦略的投資」の両方を見抜く力を身につけましょう。
🎯 「投資なき所に、成果なし。」
皆さんがROI視点で、養成課程期間で最大の成果を上げる支援者になることを期待しています。
参考書
【独学におすすめの教材】
【最後の一押しテクニック】
【2次試験対策】