おはようございます! 中小企業診断士&経営指導員として、現場支援と、受験生を応援しているセバスチャンです!
こんな、お悩みはありませんか?
「PPMってなんとなく覚えてるけど、実際どうやって使われてるの?」
「花形?金のなる木?名前は聞いたことあるけど、実務では見たことない…」
そのモヤモヤ、今日で解消しましょう!
PPMは単なる試験用の暗記フレームじゃありません。実は、企業が“どこに資源を投資するか”を決める超・重要な判断軸です。特に、企業の経営戦略や事業再構築を支援する場面で大活躍します!
今回は、日本を代表する2社の事例(ソニー&サントリー)や、私の実務での事例をもとに、PPMの本質と実務への応用を学んでいきましょう!
ウォームアップ:PPM理解度チェック5問
試験や実務でも問われやすいPPMの基礎。まずはウォームアップで理解をチェックしてみましょう!
■ 問題1(基礎知識)
PPM分析で「金のなる木」に該当する事業の特徴として最も適切なものはどれか?
A. 市場成長率は高いが、シェアが低い事業
B. 市場成長率もシェアも低い事業
C. 市場成長率は低いが、シェアが高く安定した収益を生む事業
D. 将来性があり、積極投資を要する事業
→ 正解:C
■ 問題2(分類の応用)
以下の説明に最も当てはまるPPM分類はどれか? 「急成長中の市場で、自社のシェアはまだ低い。今後の投資次第で主力事業に育てる可能性がある。」
A. 花形
B. 問題児
C. 負け犬
D. 金のなる木
→ 正解:B
■ 問題3(実務的視点)
PPM分析が最も効果を発揮する経営判断は次のうちどれか?
A. 自社商品の価格改定
B. 新製品の技術仕様検討
C. 複数事業間の資源配分
D. 顧客満足度調査の設計
→ 正解:C
■ 問題4(過去問類似)
次のうち、「花形」に該当する可能性が最も高いのはどれか?
A. 市場が成熟しているが、自社のシェアは高い製品
B. 成長市場に投入したばかりで、まだ赤字の製品
C. 成長市場でトップシェアを維持している主力製品
D. 売上が減少し続けている老朽商品
→ 正解:C
■ 問題5(ソニーの事例から出題)
ソニーがスマートフォン向けイメージセンサーに注力した戦略は、PPMのどの分類からどの分類への移行を狙ったものか?
A. 金のなる木 → 負け犬
B. 負け犬 → 花形
C. 問題児 → 花形
D. 花形 → 金のなる木
→ 正解:C
【試験で問われるPPMのポイントまとめ】
以下の点は、試験でも頻出です!しっかり押さえておきましょう。
- 4象限の特徴(花形/金のなる木/問題児/負け犬)
- それぞれに対する戦略的アプローチ
- 成長率×シェアという2軸で考える
- 資源配分や撤退判断の視点
- キャッシュフローでの観点
PPMは、単なる理論ではなく「経営資源の使い方」を考えるための武器です!
PPMとは何か?
以下の表は、PPMフレームワークにおける4象限の分類と、それぞれの特徴・戦略をまとめたものです。ここは、必須ですので、おさらいです。
分類 | 特徴 | 基本戦略 |
---|---|---|
花形 | 市場成長率が高く、シェアも高い | 投資を継続し、市場トップを維持 |
金のなる木 | 市場成長率は低いが、シェアは高く収益性が高い | 投資は抑え、キャッシュを回収・活用 |
問題児 | 市場成長率は高いが、シェアが低い | 選択的に投資し、育成または撤退を判断 |
負け犬 | 市場成長率もシェアも低い | 撤退・縮小を検討 |
PPM(Product Portfolio Management)とは、ボストン・コンサルティング・グループが提唱したフレームワークで、企業の複数事業を「市場成長率」と「相対的市場シェア」の2軸で分類します。
区分 | 特徴 | 基本戦略 |
---|---|---|
花形 | 成長率◎・シェア◎ | 継続投資してトップ維持 |
金のなる木 | 成長率△・シェア◎ | 投資を抑え安定収益化 |
問題児 | 成長率◎・シェア△ | 投資判断で育成or撤退 |
負け犬 | 成長率△・シェア△ | 撤退・縮小を検討 |
この分類により、事業ごとに資源配分や撤退判断がしやすくなり、経営戦略の意思決定に役立ちます。

【事例①】ソニー:PPMで再成長を実現
ソニーは多角的な事業を展開していましたが、近年PPMに基づく事業整理を進めています。
- 負け犬: カメラモジュール事業 → 競争力低下により撤退
- 問題児 → 花形: スマホ向けイメージセンサー事業 → 成長分野に集中投資
- 金のなる木: 音楽・映像・金融 → 安定収益源として維持
このように、不要な事業から撤退し、成長分野に集中した結果、ソニーは業績をV字回復させました。PPMは単なる分類ではなく、「どこに未来があるか?」を見極める戦略眼です。
【事例Ⅱ②】サントリー:ウイスキーで稼いでビールを育てる
サントリーは、PPMの考え方を飲料事業の中で巧みに活用しています。
- 金のなる木: ウイスキー事業 → 高収益な安定部門。ここで稼いだ資金を原資に…
- 問題児 → 花形: ビール市場 → 参入当初は苦戦(シェアが低い)も、投資を継続して花形に!
- 花形: 清涼飲料水分野 → ヒット商品多数、主力成長部門に
安定事業で得たキャッシュを、将来有望な新分野に回すことで、ポートフォリオ全体の成長バランスを構築しています。
企業名 | 金のなる木 | 問題児(→花形) | 花形 | 負け犬 |
---|---|---|---|---|
サントリー | ウイスキー | ビール事業(参入初期) | 清涼飲料/ビール(現在) | 該当なし |
【実務事例】実際の支援現場から:専門そば店の多角化戦略
最後に、私が実際に、事業再構築補助金で支援した「そば専門店」の具体的な事例をご紹介します。
PPMフレームを使って、事業全体の見直しと新たな展開を支援した内容です。
■ 支援の背景
熊本県のとある町にある私の支援した事業者は、ミシュランガイド掲載の実績もある高付加価値なそば専門店です。しかし、当時、コロナ禍によって観光・外食の需要が激減し、売上が不安定な時期が続きました。
事業者は現状の飲食業一本足打法から脱却し、安定的な収益構造への転換を希望されていました。
■ 支援内容の流れ(PPMの活用)
- 金のなる木(現在)
- 既存のそば専門店事業は、安定収益を生む「金のなる木」。ただしコロナ等の外部環境に影響されやすい。
- 問題児(将来の投資先)
- 「紫芋を活用した焼酎商品」の開発事業は、新市場でシェアゼロからのスタート。まさにPPMでいう「問題児」。
- 戦略方針:
- 「金のなる木」で稼いだ収益を、新たな「問題児」事業に投資し、「花形」事業へと成長させることを目指しました。
■ 実行した支援内容
以下のように、各事業のPPM分類と対応した支援方針を整理しました。
PPM分類 | 事業内容 | 支援内容・戦略方針 |
---|---|---|
金のなる木 | 既存のそば専門店 | 安定収益源としてブランド維持。クロスセル活用により他事業との連携も視野に。 |
問題児(投資対象) | 紫芋焼酎 | 商品企画・製造ライン整備・補助金申請サポート・販路開拓による育成支援 |
花形(将来像) | 地域特産品のプロデュース事業 | 将来の成長軸として、地域資源活用・商品群展開・ブランド統合による構想策定 |
- 市場分析と競合優位性の明確化:町に明確な特産品がなかったことに着目し、高価格帯焼酎を“地元手土産”としてポジショニング。
- 製造ラインの新設支援:糖化装置・ろ過装置・殺菌装置などの導入について、公的支援制度(補助金)を活用。
- ターゲットの明確化:
- 地元住民向け:贈答・手土産用(高単価)
- 県外顧客向け:ネット通販やメディア露出を活用した拡販
- 商品設計とブランド開発:紅白焼酎(赤色と白色の焼酎)などの企画により、そば屋のブランド力と連動させた商品開発を支援。 ※赤色は焼酎として認められなかったので、リキュールへ。
- キャッシュフローと投資回収の見通し策定:収益予測や費用対効果(NPV)をシミュレーションし、持続可能性を検証。
■ 成果と今後の展望
- 「金のなる木」事業の安定収益を活かし、新事業を育成するPPM戦略が成功。
- 商品開発後は、既存のそば屋に来店する顧客とのクロスセルにより収益増を見込み、将来的には地域特産品のトータルコーディネート企業を目指す段階へ。
PPMの考え方をベースにすることで、「撤退すべきか」「投資すべきか」の見極めが明確になり、経営の意思決定スピードが格段に上がります。
私は前職で、飲食店で製造も指導していた実務経験があります。その時の調理師免許を活用し、大学で、事業者と芋剥きをし、色の実験を一緒にしました。また、その時開発した焼酎に、そばのだし汁を合わせた焼酎は、この店舗でしたか味わえない唯一無二のもの。相乗効果まで!
商工会の経営指導員を含む実務に長けた支援者だからこそできる強みのある支援かもしれません。
なお、数年ぶりに、オーナーに会って話してたら、今度は「そば列車」をして地域を盛り上げたい!とのこと。ウキウキしますね。
実務&養成課程実習でも使えるワンポイント
実務上、支援を受ける方や、ステークホルダーに一番伝えたい箇所は、フレームワークのどこに置く?
結論から言います。右上です。「一番伝えたい箇所を右上に置く理由」は、人間の視線の動きと認知の習慣に基づいたものです。以下にその理由をわかりやすく整理します。
✅ なぜ右上が最も強調されるのか?
① Zの法則(Z型視線)
日本語や英語では、左上から右下に向かって視線が流れるという習性があります。
特に図表やプレゼン資料では、以下の順で視線が動く傾向があります。
→ 左上 → 右上 → 左下 → 右下
👉 右上は“2番目”に見られる場所であり、最も強いインパクトを残しやすい位置です。
② 情報の優先順位を認識しやすい
多くのビジネス資料やプレゼンでは、右上に「結論」「推奨」「成功事例」などの最も伝えたい内容を置きます。
視線の流れと相まって、自然に「ここがポイントなんだな」と認識されるのです。
③ 右上=ポジティブな場所と捉えられやすい
心理学的に、右上は「成長」「成功」「未来」といったポジティブな印象と結びつきやすいと言われています。
グラフでの「右上」は、売上や成績が良いことを表すことが多く、ポジティブな象徴として定着しています。
こんな、偉そうに言ってますが、養成課程の実習では良く、インストラクターから怒られていました。笑。
まとめ:試験にも、現場にも効く!
PPMのフレームを使うと、現場でも次のような判断に役立ちます。
- 「今の主力事業って、どの象限に入る?」
- 「新しいアイデアは“問題児”か?投資の価値はある?」
- 「“金のなる木”で稼いだお金、どこに再投資する?」
このような問いを立てながら支援できる診断士は、提案の説得力が違います。
ぜひ、今回の事例(ソニー・サントリー)や、私の実務での活用を参考に、自分の会社や支援先にもPPMを当てはめてみてくださいね!
使えない知識を得るな!せっかく学ぶなら、実務式で学ぼう!次回もお楽しみに!
参考書
【独学におすすめの教材】
【最後の一押しテクニック】
【2次試験対策】
【実践で使うおすすめの本】