突然ですが、こんなお悩みありませんか?
- 「IZMって試験に出るけど、具体的に何を指すのかわからない…」
- 「POPや陳列の工夫って、ただの飾りじゃないの?」
- 「実務でどう活かせるのかピンとこない」
おはようございます。経営指導員&中小企業診断士のセバスチャンです。
今回の解説は、そんなお悩みについて、実際の経営支援現場に20年以上携わり、年間100件以上の事業者支援を実施している私の経験を基に、わかりやすく解説します。
この解説を学べば、「理論だけでなく、売場改善の実務」にもつなげること間違いなし!
【ウォームアップ】理解度チェック!5問クイズ
問題1:IZMの基本概念は?
A. 売場での接客技術
B. 店内の照明演出
C. 商品の陳列・演出による販売促進技法
D. 顧客情報の管理技術
→ 解答:C
解説: インストアマーチャンダイジング(IZM)は、店舗内での販売促進の技術であり、「売場でお客様の購買行動を促す仕組みづくり」を意味します。
問題2:ゴンドラエンドに設置される特売棚の目的は?
A. 通行の妨げを防ぐため
B. 来店導線を誘導するため
C. 売場面積を広げるため
D. 高額商品を隠すため
→ 解答:B
解説: エンド陳列は、来店者の視線を引きやすい位置にあり、衝動買いを誘導しやすい戦略的なポイントです。
問題3:IZMの理論背景にある価値工学(VE)の考え方として正しいものはどれか?
A. コスト削減だけを目的とする考え方
B. 品質を犠牲にして価格を下げる手法
C. 顧客が感じる価値を最大化しながらコスト効率を追求するアプローチ
D. 売上を上げるために広告費をかける施策
解答: C
解説:価値工学(Value Engineering:VE)は、製造業をはじめとした多くの分野で採用されている手法で、「価値=機能 ÷ コスト」の公式に基づきます。IZMではこの考え方が応用されており、「限られた売場スペースの中で、いかに高い価値(体験や満足)を生み出すか」が重要視されます。単に価格を下げるのではなく、機能や体験を充実させながら適正なコストを維持する姿勢が問われます。
問題4:実務においてIZMが効果を発揮する場面は?
A. オンラインショップの構築
B. 棚卸資産の処分
C. 売場づくりによる売上改善
D. 融資計画の作成
→ 解答:C
解説: IZMはまさに「売場づくり」が本領。来店客の購買行動を促すために不可欠な現場改善手法です。
問題5:IZMの典型的な成功事例として該当しないものは?
A. 商品のクロスMD
B. カゴの大きさ変更による購入単価の上昇
C. オムニチャネル戦略による販売拡大
D. 季節感を取り入れたディスプレイ
→ 解答:C
解説:オムニチャネル戦略は、オンラインとオフラインを統合して顧客接点を拡大する施策であり、販路戦略に該当します。一方、IZM(インストアマーチャンダイジング)は、あくまで店内における陳列・導線・体験を通じて、購買行動を高めるための手法です。選択肢A・B・Dはいずれも店内の物理的工夫や演出によって購買単価や立ち止まり率を高めており、IZMの代表的アプローチです。したがって、CはIZMの典型例とはいえません。IZMの試験対策では、「どこで・誰に・どう売るか」の“どこ”=「店内」に注目することが重要です。
試験で問われるポイントまとめ
中小企業診断士試験では、単なる知識の暗記ではなく、理論と実務の架け橋を問う出題が増えています。
IZMにおいても、売場改善のためにどう導線設計するか、POPをどのように設置すれば購買率が上がるか、さらにはクロスMDとの違いを踏まえた応用的な視点が問われます。
特に事例問題では、「IZMの視点から店舗改善案を提案せよ」という形で出題されることがあり、来店者数や売上改善の論拠としてIZMの要素を的確に挙げられるかが得点の鍵となります。
- IZMの定義と目的(「販売現場での購買促進」)
- 導線設計・ゴンドラ配置・POP活用などの代表施策
- インストアプロモーション(非価格手動型と価格手動型)の理解
- 特にクロスマーチャンダイジングなどの非価格手動型のテクニックの理解
- 購1買心理・顧客導線と連動した実践例
ISPが重要!
IZM(インストアマーチャンダイジング)とは?
IZMとは、インストアマーチャンダイジングの略称であり、小売業における売場づくりの戦略的技法を指します。
IZMは大きく以下の2つの柱で構成されます。
- インストアプロモーション(ISP)
- 非価格主導型(POP、試食、デモンストレーションなど)
- 価格主導型(値引き、タイムセール、まとめ買い促進など)
- スペースマネジメント(SM)
- スペースアロケーション(売場スペースの最適配分)
- プラノグラム(棚割計画:商品陳列の位置や量を事前に設計)

これらを組み合わせて、お客様の購買行動を自然に導き、売上や利益の最大化を図るのがIZMの本質です。
言い換えれば、IZMは「小売現場での価値工学(Value Engineering, VE)」と捉えることもできます。VEの基本式は「価値(Value)=機能(Function)÷コスト(Cost)」です。
つまり、同じコストでもより高い機能を提供すれば価値が上がり、同じ機能でもコストを下げれば価値が上がるという考え方です。IZMもこれと同様に、限られた店舗スペースや予算の中で、いかにお客様にとって価値のある売場を提供するかを追求します。たとえば、POPを設置するだけでも『商品の魅力を伝える』という機能を果たし、売場全体の価値を向上させることができます。
生産管理の応用!
目的
様々な店舗技術という手段が、何の目的のためにあるかを理解しましょう。
- 顧客の購買意欲を高める
- 陳列や演出によって、つい買ってしまう「衝動買い」を誘発
- 売上単価や回転率を高める
主な手法
「IZM」は、単なる理論ではなく、顧客の心理と動線を読み解き、店舗価値を最大化するための武器です。
施策 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
エンド陳列 | 通路の突き当たりに陳列 | 衝動買いの誘導 |
クロスマーチャンダイジング | 関連商品をまとめて配置 | 顧客単価UP |
POP・販促ツール | 商品説明・割引情報を表示 | 購買意思決定の後押し |
導線設計 | 来店導線に沿った商品配置 | 滞留時間・発見率向上 |
コンビニを意識して見てみよう!
中小企業診断士的ワンポイントアドバイス
売上高は、「売上高 = 客単価 × 来店客数」に分解できます。
このうち、IZMは主に「客単価の増加」を狙った施策です。
さらに客単価は、「商品単価 × 買い上げ点数」に分解できます。
つまり、IZMでは高付加価値の商品を提案したり、関連商品の陳列やセット販売などで買い上げ点数を増やすことが重要になります。

中小企業の成功事例
ここでは、有名な企業のIZMについて解説します。
事例①:久世福商店(サンクゼール)
長野発の食品専門店「久世福商店」は、株式会社サンクゼールが運営する和のセレクトショップで、全国のイオンモールや駅ビル、百貨店などに出店しています。
各地の顧客ニーズを意識しながら、地方特産品や調味料、だし、ジャムなど「ちょっといいもの」を中心に品揃えされています。
この店舗では、季節ごとのテーマに沿った什器・POP演出を巧みに活用し、視覚訴求によって立ち止まり率と購入率を大幅に改善しています。

例えば、「夏の冷たいだし特集」では、涼しげな青系の装飾と共に試食体験を設置。香りや味の五感を刺激しながら、関連する調味料・レシピカードをセットにして購買動機を創出します。
久世福商店は、「IZM」を調味料のクロスMDや、什器での体験型演出、季節に応じたプラノグラムとPOPの展開に巧みに活用しています。結果として「来店者が自然に足を止めて手に取る」導線設計が実現されており、まさに中小企業でも参考になる優良モデルです。
事例②:ワークマン女子(ワークマン)
「ワークマン女子」は、作業着を中心としたブランドから脱却し、アウトドアや日常使いも意識した女性向けラインとして展開されています。店舗設計においては、来店客の8割が女性になるように設計されており、女性の目線・行動特性に配慮した売場づくりが特徴です。
具体的には、ゴンドラの高さを低くして商品が手に取りやすくなるようにしたり、POPのデザインやフォントを女性好みに調整したり、通路幅を広くしてベビーカーや買い物カゴでも移動しやすいように設計されています。さらには、全体の導線設計も見直され、入店から出口まで自然と多くの商品を目にするよう工夫されています。

これらの施策はまさにIZMの視点であり、単なる陳列ではなく「体験としての売場」をデザインしている点がポイントです。商品ラインナップも、従来の作業着から日常使いできるアウトドアウェアやレインコートに拡張しており、商品の見せ方も機能性よりファッション性を強調しています。
なお、今後「ワークマン女子」のブランド名は、男性客や家族層の取り込みも見据えた名称に変更される方針が報じられており、IZMの応用対象もさらに広がっていくと期待されます。
実務事例:地方の販売店×IZM活用
私の前職(コンビニ)時代に実際にやっていた実践例を解説します。
コンビニ時代の実体験
手前味噌ながら、私はかつて九州に存在したコンビニチェーンにて、10年以上スーパーバイザー(SV)を務めた経験があります。当時、サントリーの缶コーヒー「BOSS」の販売全国1位を達成したのですが、その背景には、当時話題となっていた『進撃の巨人』をテーマにした手作りPOPを展開したことがありました。このPOPが話題性と商品の訴求力を生み出し、売上急伸に貢献しました。
また、毎週新発売される焼き立てパンの販売ランキングで全国1位を連続獲得した際は、12時のランチピークに合わせて、鉄板から「ジュウッ」と音を立てる演出とともに、火傷寸前の焼き立てパンを並べ、お客様の五感を刺激するパフォーマンスを実施していました。これもまさにIZMの本質、「体験を通じた購買動機の創出」でした。
さらに、あるお客様から「子どもが駄菓子を買いにくい雰囲気だ」と言われたことをきっかけに、トップエンド(棚の最上段)に大人買い向け駄菓子コーナーを設け、『ブラックサンダー』や『うまい棒』を大胆に陳列したところ、これが思いのほかヒット。家族連れの客層にも受け入れられ、売上が大きく伸びたという実体験もあります。今でも一部の店舗では大人買いコーナーがありますよね。

これらはすべて、価格ではなく「視覚・音・体験・感情」などを活用したIZMの考え方に基づくものであり、今なお経営支援における現場提案の礎となっています。
商工会での支援
ここからは、現職で支援した事業者さんの取組を紹介します。
支援の背景
地方の自動車販売・整備業を営む事業者から、ボートトレーラーの展示・販売を強化したいという相談がありました。
支援内容(IZMの実務的な活用)
- 事務所改装による展示導線の設計(エンド展示+実物体験ゾーン)
- POPによるトレーラーの特徴訴求
- 商談スペースの設置で購買後押し
- 導線設計に沿った在庫配置
実行した支援内容
- 外注により350万円で店舗改装
- 代表のボートレース経験を反映した接客トーク・展示物設計
- SNS・チラシとのクロスメディア販促

成果と今後の展望
- 展示場効果により成約率が向上(10件成約・売上176万円増)
- SNSやHPとの連動で、九州圏外からも来店者増
- 将来的にはマリンレジャー×レンタカーの「体験型販売」へ展開予定
実務&養成課程実習でも使えるワンポイント
IZMは「売場×顧客体験」を考える現場戦略。
養成課程での現場実習では、売場図面を描き、導線・照明・高さ・什器まで論理的に説明できるようにしておきましょう。
インストアプロモーションの提案が、ある意味では楽で提案しやすいのですが、中小企業診断士予備軍の皆さんは、ぜひ【スペースマネジメント】に挑戦することをおすすめします。
\現場を変えたいなら、棚を動かせ!/
売場に全ての答えがある!
まとめ|IZMは“売場という戦場”の武器である!
理論だけではなく、売場改善や購買行動を促す仕組みとして、IZM(インストアマーチャンダイジング)は実務でも非常に役立つ考え方です。
- IZMは「売場での購買行動」を促すための戦略技術
- 売場=営業マン。棚の高さ・POP・展示順が収益を左右する
- 実務でも即応用可!「売れない」を「売れる」に変える第一歩
IZMを理解するだけで、あなたのノウハウは大きく広がります。
下記は中小企業診断士養成課程でも、おすすめの本です。
参考書
【独学におすすめの教材】
【最後の一押しテクニック】
【2次試験対策】
【実践で使うおすすめの本】