突然ですが・・・
「頑張っているのに、結果が出ないんです…」
これは、中小企業診断士養成課程で私が耳にした、ある受講生の言葉です。実務補習でも、研究会でも、頑張りが空回りして疲弊する人は多くいます。
こんにちは。経営指導員&中小企業診断士のセバスチャンです。
今回の解説は、そんなお悩みについて、実際に中小企業診断士養成課程で本気で取り組んだ「最速で成果を出すレバレッジポイント思考」について、実務視点でわかりやすく解説します。
この考え方を学べば、限られたリソースでも、確実に結果を出すことができるようになります。
レバレッジポイントとは?
レバレッジポイントとは「てこの原理」のようなもので、少ない力で大きな成果を生み出せる部分を意味します。
単に頑張るのではなく、どこに力をかければ効率的かを見極めることがカギです。
今回は、財務やマーケティングのような「お金」や「施策」ではなく、“人”という資源にフォーカスしたレバレッジ活用について解説します。中小企業の現場では、「人の配置」「人の動かし方」「チームの仕組みづくり」こそが、最小の努力で最大の成果を引き出すカギになります。
財務の話ではないぞ!
レバレッジポイント5つの視点
ここからは、人をどう活かすかという観点で、成果につながる“てこの支点”をどこに置くべきかを5つの視点で整理していきます。
いずれも現場で即実践できる内容なので、自分の職場や支援先に置き換えながら読み進めてください。
- 数字(割合)に着目する
- 売上や成約などの「割合」に注目。たとえば成約率を10%から20%に上げるだけで売上が倍増するケースも。努力量より成果につながる“比率の改善”がカギ。
- ルールの欠点を探る
- 組織の評価制度や行動基準が、成果につながらない動きに時間を割いていないかをチェック。必要ならばルールそのものを見直し、評価と行動が結びつく設計に変える。
- 構造の非効率を見直す
- あれもこれも頑張るのではなく、「やらないこと」を決めてリソースを集中。分業やSNS活用、社内連携、外部資源活用なども有効。
- 合目的的に検証する
- 目的に合わない作業を削る勇気を持つ。KPIと関係ない細かすぎる対応や、顧客にとって効果の薄い工数は思い切って削除。
- バリューチェーン視点で全体最適を狙う
- 全体のプロセスでどこがボトルネックかを見極める。現場だけでなく、決裁者やキーパーソンにアプローチすることも、成果を飛躍的に高めるポイント。
この5つの視点は、いずれも「人の配置」「評価の仕組み」「業務の流れ」「目的との整合性」など、人の動きにレバレッジをかけるためのヒントです。すべてを一度に実行しようとせず、自社やチームの状況に応じて、どれか一つでも見直すだけで大きな効果を発揮する可能性があります。
⑤が重要だ!
中小企業診断士的ワンポイントアドバイス
バリューチェーンの視点で支援を設計しよう
バリューチェーンとは、企業が価値を生み出す一連の流れを意味します。
もっと簡単に言えば、「商品やサービスがお客様の手元に届き、満足してもらうまでの道のりすべて」を指します。中小企業支援では、この全体の流れに目を向けて、“どこを少し変えれば一番大きな効果が出るか”=レバレッジポイントを見つけることが重要です。
たとえば飲食店の場合、「料理の質」をどれだけ高めても、そもそも来店がなければ意味がありません。逆に、「SNSでの発信」を強化してお客様が増えれば、料理の良さが伝わってリピーターが増える、といった好循環が生まれます。
このように、成果に直結する部分(例:集客・接客)を見極めてテコを利かせることで、少ない労力で大きな成果が得られるのです。

支援の際は、
「この会社の価値はどこで生まれているか?」
「お客様が本当に喜んでいるのはどの瞬間か?」
を考えながら、改善ポイントを探しましょう。
中小企業の現場で使える実践テクニック
中小企業が直面する最大の課題のひとつが「人手不足」。
でも、単に人を増やすだけでは根本解決になりません。ここでレバレッジを効かせるには、限られた人数で効率的に回す仕組みを作ることが重要です。
つまり、“少ない人数で最大の成果”を出す考え方がポイントです。
支援先への提案例
部署統合・意思決定構造のスリム化
人手不足の状況でレバレッジを効かせるには、無駄な部署や役割の重複を見直すことが効果的です。また、会議や承認プロセスで関与する人数が多すぎると、意思決定が遅れ、現場の動きも鈍ります。部署を統合して業務フローを整理し、責任と権限を明確にすることで、少人数でもスピード感のある運営が可能になります。

多様な人材(女性・シニア・未経験・外国人)の活用
特定の人物像に縛られず、仕事を細分化することで、短時間勤務者や外国人、シニア層なども活躍できる環境が整います。さらに近年では、生成AIなどの技術を活用することで、業務の標準化やマニュアル化が進み、個々の能力のバラつきにも対応しやすくなってきました。外国人材についても、支援体制を整えれば戦力として十分に活躍でき、多様な働き方を受け入れる柔軟な職場づくりが鍵となります。

ハローワークや商工会などの支援機関との連携
人材採用を自社だけで抱え込まず、公的支援機関と連携することで、求人内容の改善やマッチングの質が高まります。無料での相談や支援も受けられるため、コストをかけずに採用効率をアップさせることができます。
地域リソースを巻き込め!
養成課程でのチームマネジメントでの応用
養成課程では、複数人のチームで課題に取り組む場面が多くあります。
ここで成果の差を生むのは「誰が優秀か」ではなく、「どう仕組みを整えるか」です。最小限の工夫で最大の力を引き出す、つまり“レバレッジ”をかけたチームビルディングがカギとなります。
Step 1:キックオフで仕組みを決める
初回のミーティングで「ゴール」と「役割」を明確に共有するだけで、作業効率は劇的に変わります。誰が戦略を描き、誰が資料をまとめ、誰が発表するかといった役割を全員で納得感を持って決めることが重要です。
Step 2:メンバーの強みを見極める
各班員の特性や得意分野(論理構成・情報整理・話し方・図解など)を話し合い、共有しておくことで、「その人が最も成果を出せる仕事」に配置できます。これはまさに「人の配置にレバレッジをかける」ことに他なりません。

Step 3:SMARTな目標を立てる
チーム全体で成果に向かうには、SMART目標(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限付)の共有が不可欠です。
例:「今月中に実習先の製造業で歩留まり率を85%から90%に改善する」
このような数値で見える目標があると、ゴールの共有、進捗確認、達成感の醸成がスムーズに行えます。
Step 4:心理的安全と称賛文化をつくる
メンバーの意見が出やすくなるように、「ミスしても責められない雰囲気」や「どんな発言にも反応が返る安心感」を意識してつくります。また、即時の称賛、週1回の簡単な振り返りミーティングを取り入れることで、貢献実感が生まれ、モチベーションが継続します。
このように、個人の力に依存するのではなく、「仕組みと設計」によってチームの力を最大化することが、養成課程での成果を飛躍的に高めるレバレッジ思考の実践です。
養成課程の本質はチーム戦だ!
まとめ
今回紹介したレバレッジポイント思考は、「もっと頑張る」ではなく、「どこに力をかければ一番効果が出るか」を見極める実践知です。
特に中小企業診断士養成課程では、限られた時間とチームメンバーで成果を出すために、以下の視点が鍵になります。
- 数字・ルール・構造・目的・バリューチェーンの5つの視点から、レバレッジポイントを探す
- チームでは「人の特性」と「仕組みづくり」に注目し、無駄なく力を引き出す配置と役割設計を行う
- 中小企業支援の現場では、「人手不足」「多様な人材の活用」「業務改善」においても、レバレッジ思考は即活用できる
- SMART目標の設定や心理的安全性の醸成は、個人の力以上の成果を生み出す原動力になる
“がんばる前に、まずはてこの支点を探そう。”
思考を変えれば、行動も変わり、成果の質も変わります。
「スピードが欲しければ、進む方向を変えよ」──稲盛和夫(京セラ創業者)
参考書
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