突然ですが…
「STPって、セグメンテーションとターゲティングと…あれ、Pはなんだっけ?」
「実務でどう活かせばいいか分からない…」
「中小企業診断士試験に出るって聞いたけど、どこが狙われるの?」
そんな声、よく聞きます。
こんにちは!経営指導員&中小企業診断士のセバスチャンです。
今回の解説は、そんなお悩みについて、実際の経営支援現場に20年以上携わり、年間100件以上の事業者支援を実施している私の経験を基に、わかりやすく解説します。
この解説を学べば、試験対策にも実務活用にも強くなること間違いなしです!
ウォームアップ|理解度チェック5問
問題1:基礎知識
STPの「P」は何を指しますか?
A. Positioning(ポジショニング)
B. Promotion(販促)
C. Pricing(価格)
D. Product(製品)
解答:A
解説: STPはSegmentation(市場細分化)、Targeting(ターゲット市場選定)、Positioning(市場での立ち位置)の頭文字を取ったマーケティングの基本戦略です。
問題2:分類の応用
市場セグメントを分類する主な軸でないものはどれ?
A. 地理的変数
B. 社会的変数
C. 心理的変数
D. 行動的変数
解答:B
解説: 社会的変数という分類はありません。地理的(地域)、心理的(価値観)、行動的(購入動機など)が主な軸です。
問題3:実務的視点
STPの目的として最も適切なものは?
A. 価格競争を避けるため
B. 製品ラインを増やすため
C. 顧客に合わせた戦略立案を行うため
D. 流通チャネルの最適化のため
解答:C
解説: STPは、企業の資源を最も効果的に活かすための「誰に・何を・どう伝えるか」の方向性を明確にするためのフレームです。
問題4:過去問類似
次の中小企業診断士試験の記述のうち、誤っているものは?
A. セグメンテーションは、ニーズの共通性に基づき市場を細分化する。
B. ターゲティングは、最も収益性の高い市場を選ぶ工程である。
C. ポジショニングでは、競合との差別化要素を明確にする。
D. STPは製品開発後に実施するマーケティング活動である。
解答:D
解説: STPは製品開発やマーケティング戦略の“前段階”で実施する戦略設計です。
問題5:事例からの出題
健康志向の高まりに着目し、30~40代の女性向けに「低糖質スイーツ」を展開した企業。この戦略はSTPのどこに該当する?
A. S(セグメンテーション)
B. T(ターゲティング)
C. P(ポジショニング)
D. すべて
解答:D
解説: 市場の傾向(健康志向)を背景に細分化(S)し、30〜40代女性を選び(T)、「低糖質スイーツ」として打ち出し(P)た点から、STPすべてに該当します。
試験で問われるポイントまとめ
下記に試験で問われるポイントをまとめます。
「STPの順序」と各ステップの役割
STPは「Segmentation → Targeting → Positioning」の順に行うことが重要です。
市場を細かく分け(S)、その中から最も自社に適した顧客層を選び(T)、その顧客の心に残る立ち位置を築く(P)という流れで整理します。この順序を誤ると、ズレた戦略になってしまうため、順番と役割の理解は試験でも実務でも基本中の基本です。
セグメンテーション軸の分類
市場を細かく分ける際は、地理的(地域や気候)、人口統計的(年齢・性別・収入など)、心理的(価値観・ライフスタイル)、行動的(購買頻度・使用目的など)の4分類を意識しましょう。複数軸の組み合わせで“刺さるセグメント”を見つけることが、的確なターゲティングにつながります。
ポジショニングマップの作成と意味
ポジショニングマップとは、縦軸・横軸に異なる価値要素を設定し、自社と競合の商品をマッピングする手法です。これにより、差別化できる空白領域(ホワイトスペース)や自社の再定義ポイントが視覚的に把握できます。試験では軸の選定理由も問われることがあるので注意。
実務活用との接続ができるか
単なる理論で終わらせず、「誰に」「何を」「どう届けるか」という戦略が、実際の事業計画や販売活動に落とし込まれているかをチェックしましょう。後述の「K農園事例」のように、STPをもとに商品設計・販路・ブランディングまで一貫して整合性が取れていれば、実務活用として非常に優れた成功事例となります。「STPの順序」と各ステップの役割
STP呪文のように覚える!
STPとは何か?
STPとは、企業がマーケティング戦略を立てる際の基本中の基本となるフレームワークです。
以下の通り、3段階のプロセスを踏みます。
ステップ | 意味 | 実務での役割 |
---|---|---|
Segmentation(S) | 市場を細かく分ける | 顧客ニーズを明確化するための土台作り |
Targeting(T) | どの層に狙いを定めるか | 自社の強みに合致した市場を選定 |
Positioning(P) | 競合と差別化し認知を取る | 顧客に価値を伝える「印象」の設計 |
「STP」は、単なる理論ではなく、“経営資源を効率よく活かし、顧客に刺さる戦略”を考えるための武器です。
中小企業診断士的ワンポイントアドバイス
そもそも「マーケティング」とは何でしょうか?
中小企業診断士の視点では、マーケティングとは「顧客に買ってもらえる仕組み」をつくることと定義するのが実務的です。
単なる広告や販促ではなく、「誰に・何を・どのように届けるか」をあらかじめ設計し、自然と「売れてしまう」状態を作り出す——それがマーケティングです。
製品・サービスの開発段階から顧客視点で考え、流通・価格・販売・情報発信までの全体最適を図る「戦略的思考」としてマーケティングを理解し、STPをその起点に据えることが重要です。

単に販促を指すのではなく、製品・サービスの設計段階から顧客との接点すべてを最適化する「戦略的思考」としてマーケティングを理解し、STPをその起点に据えることが重要です。
日本の有名中小企業によるSTPの活用事例
イメージをつかむために具体的な企業のSTPをみてみましょう!
① 株式会社トリゼンフーズ(福岡県/九州地方)
水炊き専門店「博多華味鳥」を展開するトリゼンフーズは、地鶏や鍋料理を愛する層をセグメント化し、「家庭でも料亭の味を楽しみたい中高年層」をターゲットに設定。「家庭で食べられる本格水炊きセット」として、冷凍食品やEC販売を展開し、ポジショニングを確立しています。トリゼンフーズは、STPを飲食・通販事業の中で巧みに活用しています。

STP整理
- S(セグメンテーション): 鍋料理や地鶏を好む中高年層
- T(ターゲティング): 料亭の味を自宅で楽しみたい家庭
- P(ポジショニング): 「本格水炊きが自宅で簡単に楽しめる」食品ブランド
② 株式会社竹中銅器(富山県高岡市/北陸地方)
伝統工芸の「高岡銅器」を手がける竹中銅器は、美術品志向からインテリア・デザイン志向へと顧客ニーズを細分化。「和モダンな空間に調和するインテリア小物」を求める30〜50代の高感度層をターゲットに、ポジショニングを「伝統×モダン=生活に溶け込むアート」と再定義しました。
竹中銅器は、STPを伝統工芸事業の中で巧みに活用しています。

STP整理
- S(セグメンテーション): インテリア感度が高い30〜50代層
- T(ターゲティング): 和モダンな空間に合う工芸品を探す層
- P(ポジショニング): 「生活に馴染む伝統工芸=インテリアアート」
② 株式会社石井表記(広島県福山市/中国地方)
電子機器の回路基板などの製造装置を開発するBtoB企業・石井表記は、技術力志向の大手企業とは別に「コストを抑えても品質を求める中堅・新興メーカー層」にターゲットを絞り込みました。そこで「価格と品質のバランスが良い提案型企業」というポジショニングを打ち出しています。
石井表記は、STPを製造装置開発事業の中で巧みに活用しています。

STP整理
- S(セグメンテーション): 製造装置の導入を検討する中堅・新興企業
- T(ターゲティング): 品質は重視しつつもコストも意識する企業
- P(ポジショニング): 「高コスパかつ提案力のある製造装置メーカー」(福岡県/九州地方)
実務事例
本事例では、地域に根差した農業者が、どぶろく製造・販売という新たな挑戦に向けてSTPの考え方を活用し、「誰に・何を・どう届けるか」を明確にした支援内容をご紹介します。
K農園事業者のSTP実装支援
今回ご紹介するK農園は、熊本県山間地域の自然豊かな土地で営まれている家族経営の農園です。農業特区制度を活用し、地域資源を活かしたどぶろく製造を志していましたが、「誰に届ければいいか分からない」「どんな差別化ができるのか」という点で悩まれていました。加えて、無農薬で手間暇かけて育てた農産物も価格競争に巻き込まれ、地元での売上が思うように伸びないという課題も抱えていました。
私は経営指導員として現地を訪問し、現場の思いやこだわり、地域資源の強みを丁寧にヒアリング。その上で、制度上の制約(免許や販路)も踏まえつつ、実現可能で市場性のある戦略構築に取り組みました。
支援内容の活用(STPの活用)
- S(セグメンテーション)
山間地域の観光に関心があり、発酵食品や地域性のあるお酒に興味を持つ都市部の30〜50代女性層。 - T(ターゲティング)
特に「おしゃれでナチュラル志向」「日常にちょっとした特別感を求める」都市部在住の40代女性を中心に設定。 - P(ポジショニング)
「農園が仕込む、自然派でストーリー性のあるどぶろく」として、飲みやすさ・パッケージ・生産者の顔が見える安心感を前面に押し出し、“ちょっといい日の自分へのご褒美”や“友人への贈り物”として選ばれる商品として差別化。
酒蔵製造品とは異なる、「農園で仕込む、想いの詰まったどぶろく」として、“旅の思い出”や“贈り物”として選ばれる価値を明確化。

実行した支援内容
K農園のどぶろく製造という新たな挑戦に対して、マーケティング理論に基づく戦略の立案だけでなく、現場での実行支援を一貫して行いました。以下は、特に効果を発揮した支援内容の具体例です。
- STPをもとに、ECサイトとパッケージデザインを刷新
- 顧客への手紙同封やストーリーブック制作
- 百貨店へのテスト出品とフィードバック取得
これらの支援は、単なる販促施策ではなく、「想いを伝える仕組みづくり」として、STP戦略の本質を体現した好事例となりました。
成果と今後の展望
K農園のどぶろく製造におけるSTP実践は、理論の有効性を証明するだけでなく、地域密着型の一次産業においても高い成果を上げうることを示しました。以下は、支援後に得られた主な成果と今後の展望です。
- 売上を前年比140%増加目標で推移
- 顧客単価が上昇
- 「地元の顔が見える農家」としてブランド定着
今後はふるさと納税返礼品やギフト展開を検討中です。
この支援では、単なるマーケティング戦略の設計にとどまらず、農園ご夫婦との対話を通じて「なぜ今、山間地域でどぶろくなのか」という背景と物語を紡ぎ直し、酒蔵とは異なる“農園発どぶろく”の価値を言語化するところから支援を進めました。パッケージ、ネーミング、販売チャネルすべてに“想い”を込めることで、競合との明確な差別化を実現できたと感じています。
本件は「地元資源×戦略マーケティング」の好事例として、他の農業者や地域事業者にも応用できるヒントが詰まっています。
このように、STPの実践は単なる理論にとどまらず、地域密着型の事業でも成果に直結する力強いマーケティング戦略として機能します。
マーケティングの基点だ!
まとめ|本記事の振り返り
本記事では、STPマーケティングという基本フレームを「試験対策」と「実務活用」の両面から徹底的に掘り下げてきました。
特に、K農園のような一次産業でもSTPが有効に機能し、戦略的差別化と売上向上を実現できたことは、多くの方にとって新たな発見だったのではないでしょうか。
- STPは「誰に・何を・どう届けるか」の基本戦略
- 試験対策としても頻出の重要テーマ
- 実務でもブランド構築や商品戦略に必須
- STP活用事例から学ぶことで、即実践可能
今後、あなたが中小企業診断士として現場に立つとき、または経営者として自社を見直すとき、「STP」の3つの視点が、事業の方向性を示す羅針盤となることを願っています。
また、もし、私と同様に、知識だけでなく現場で経験を積みたい方は、商工会への転職も考えてみてください。一緒に、仲間として働きませんか?
それでは、次回の記事でまたお会いしましょう。ありがとうございました。
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