突然ですが、こんな悩みはありませんか?
「SWOT分析って、試験では出てくるけど、実務ではどう活用すればいいのかわからない…」
「クロスSWOTってどこまで深く考えたらいいの?」
「人・モノ・カネ・情報の視点って、どうやって整理するの?」
おはようございます。経営指導員&中小企業診断士のセバスチャンです。
今回の解説は、そんなお悩みについて、実際の経営支援現場に20年以上携わり、年間100件以上の事業者支援を実施している私の経験を基に、わかりやすく解説します。
この解説を学べば、SWOT分析の本質と、実務的な活用法を理解し、試験でも実務でも即使える力が身につくこと間違いなし!
理解度チェック問題
問題1:SWOTのうち「S」とは?
A. 外部の強み B. 外部の機会 C. 内部の強み D. 内部の脅威
→ 答え:C
解説:Strength=内部の強みです。企業が他社に比べて優れている要素を整理しましょう。
問題2:SWOT分析に基づいて導き出される戦略の組み合わせとして正しいものはどれ?
A. SS戦略、WW戦略、OO戦略、TT戦略
B. SO戦略、WO戦略、ST戦略、WT戦略
C. SP戦略、WP戦略、OP戦略、TP戦略
D. SW戦略、OT戦略、WS戦略、TO戦略
→ 答え:B
解説: SWOT分析で抽出された「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」を掛け合わせることで、SO・WO・ST・WTという4つの基本戦略が導き出されます。
問題3:SWOT分析に「ヒト・モノ・カネ・情報」を取り入れる理由は?
A. 人員配置の資料になるから B. 試験に出やすいから C. 戦略の精度を高めるため D. 単に便利だから
→ 答え:C
解説:各経営資源ごとに自社の状態を客観的に見つめることで、戦略の精度が高まるためです。
問題4:SWOT分析を使って事業者の内容を整理する目的は?
A. 計画書に書く形式を整えるため B. 課題を明確にし、戦略につなげるため C. 社員の不満を整理するため D. 営業報告書の参考にするため
→ 答え:B
解説:SWOT分析は、内部・外部環境を整理することで、事業者の真の課題を抽出し、戦略策定につなげるために用いられます。
問題5:実務で「クロスSWOT」を活用すべき場面とは?
A. 顧客への謝罪文作成時 B. 業務日報の記入時 C. 補助金申請・事業計画作成・経営革新支援時 D. 掃除当番の割り当て時
→ 答え:C
解説:クロスSWOT分析では、SO、WO、ST、WTの4つの戦略を整理して戦略立案します。
SWOT分析とは何か?
SWOT分析とは、「自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、外部の機会(Opportunity)、脅威(Threat)」を整理すること、そして、これらの内容から、問題点そして課題を導き出します。
- S(強み):内部資源で他社より優れている点
- W(弱み):内部資源で他社より劣っている点
- O(機会):外部環境で追い風になる要素
- T(脅威):外部環境で逆風になる要素
経営相談の入口だ!
整理の切り口
SWOT分析をより実践的に活用するためには、各要素を「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」といった経営資源の観点から整理することが有効です。これにより、抽象的な強みや弱みを、具体的な改善対象として可視化しやすくなり、戦略立案にもつながります。
たとえば、
- ヒト:社員のスキルや後継者の存在、外部専門人材の活用状況など。たとえば、事業のIT化を目指す企業にとって、デジタル人材の有無は「強み」または「弱み」に直結します。
- モノ:機械設備や立地条件、自社の技術など。設備の老朽化は典型的な弱みですが、最新設備による高品質提供は強みとして評価されます。
- カネ:資金調達力、自己資本比率、利益率、価格競争力など。財務的な安定性や、価格で勝負できる構造があるかが問われます。
- 情報:顧客データやSNS運用力、業界動向の把握力など。特に今の時代は、情報を活かした販促・マーケティングが競争優位の源泉になります。

このように、SWOT分析を経営資源で区分けして整理することで、「何が現場での行動につながるか」を明確にできます。
クロスSWOT戦略
SWOT分析では、自社の「強み」「弱み」や外部環境の「機会」「脅威」を整理しただけでは終わりません。
整理された各要素をクロスさせて考えることで、「どのような戦略を立てるべきか」という実践的な方向性が導き出されます。
つまり、SWOT分析で浮かび上がった課題に対して、どう行動すべきかを戦略として落とし込むのがクロスSWOTの本質です。
- SO戦略(攻撃戦略): 地域で唯一の自社製品技術を持つ工場が、SNSやECを活用して都市圏に直接販売を開始するなど、強みを活かして新たな市場に挑戦する場面が該当します。
- WO戦略(弱点克服戦略): 店舗のITスキル不足という弱点に対し、新しく採用した若手スタッフのデジタル知識を活かして予約管理や在庫管理をクラウド化し、新しい客層を開拓するような場面です。
- ST戦略(差別化戦略): 人口減少地域において、長年の信頼関係を築いた顧客との関係を活かして、新規競合店の進出による顧客流出を防ぐためのロイヤルティ施策(会員制度やイベントの実施)などが例になります。
- WT戦略(防衛・回避戦略): 観光客減少と高コスト構造というダブルの課題を持つ宿泊業者が、宿泊業を縮小し、オンラインツアー事業へ転換するなど、撤退と新規展開を同時に検討するようなケースです。脅威と弱点が重なる状況で、撤退や業態転換を視野に入れる場面。

なお、基本的には中小・小規模事業者においては、「SO戦略(強みを活かして機会を取りに行く)」を最優先に検討すべきです。
限られた経営資源の中でも、他社にない強みや得意分野を活かして外部の追い風を取り込むことが、最も再現性が高く、成果につながりやすいためです。
また、以前解説した「事業ドメイン」と組み合わせることが、非常に重要となります。
https://great-sebastian.com/8592/SWOT分析事例
ここでは、実際の有名企業をモデルに解説していきいます。
① 株式会社コスモス薬品(ディスカウントドラッグ コスモス)
- S(強み):九州発祥で地域密着型、大量仕入れによる低価格戦略と郊外型大型店舗。さらに、あえてキャッシュレス決済を導入しないことで、決済手数料分を削減し、その分を価格の安さに還元している点も際立った強みです。
- W(弱み):都市部での店舗展開の難しさ、EC対応の遅れ
- O(機会):物価高騰による節約志向の高まり、セルフメディケーション需要の拡大
- T(脅威):ドラッグストア業界の過当競争、大手ECモールとの価格競争

コスモス薬品は、「ST戦略」でリアル店舗の品揃えと価格優位性を活かし、競合との差別化を強化。 また、「WO戦略」として、今後のEC強化と都市型モデルの開発を視野に入れた中長期戦略を展開中です。
② 株式会社中村屋(東京・中華まん等食品メーカー)
- S(強み):長年の歴史と知名度、冷凍食品技術の強み
- W(弱み):高齢顧客層中心で若年層への訴求が弱い
- O(機会):共働き世帯の増加による冷凍食品市場の拡大
- T(脅威):価格競争の激化、コンビニPB商品の台頭

中村屋は、「SO戦略」で長年のブランド信頼を活かし、高品質冷凍中華シリーズの開発・販路拡大を進めています。 SWOT分析を通じて、自社の歴史と製造力を新たな市場ニーズに結びつける展開を図っています。
③ 株式会社サクラクレパス(文房具・教育用品)
- S(強み):知名度の高い定番商品(クレパス・水彩絵の具)
- W(弱み):製品群が学童向けに偏っており多様性に課題
- O(機会):大人の趣味・アート市場拡大、「文具女子」ブーム
- T(脅威):少子化による学用品市場の縮小、海外メーカーの流入

サクラクレパスは、「WO戦略」で大人向けの高級画材やSNS映え商品を開発し、新市場への展開を図っています。 SWOT分析を活用し、ブランドの信頼性を保ちつつ、新たな客層開拓に挑戦しています。
実務事例:地方スポーツ用品店の経営革新支援
ここでは、私が実際に支援に入った事業所について、解説をします。
■支援の背景
熊本県内のある地域密着型スポーツ用品小売店は、加工(刺繍・プリント)サービスに特化したワンストップ提供を武器にしていたが、機械の老朽化や人材の高齢化に課題を抱えていました。
■SWOT分析を活用した支援内容
後継者にヒアリングを実施し、下記の内容がわかりました。
分類 | 内容 |
---|---|
S(強み) | 地域唯一の刺繍・プリント加工の自社内製体制、創業40年の信頼 |
W(弱み) | 生産性の低い機械設備、デジタル販促力の弱さ |
O(機会) | イベント用ユニフォームや動画共有市場の伸長 |
T(脅威) | 少子化による学校市場の縮小、EC競合 |

なにげに着ていた学校のユニフォームも、ものすごく時間がかかっているんですよね。
■ヒト・モノ・カネ・情報での整理
観点 | 内容例 |
ヒト | 後継者がデジタルに強く、新サービス開発を主導できたこと。 |
モノ | 老朽化した設備を最新の刺繍機械に更新し、生産性を向上させた点。 |
カネ | 高付加価値な加工部門への集中投資と、利益率の改善が図られた。 |
情報 | SNSを活用した広報や顧客とのコミュニケーション強化、新しい販路開拓に寄与。 |
後継者の存在が大きい!
資格導き出したクロスSWOT戦略
特に、ドローンの撮影技術については、私自身も興奮した内容でした。
- SO戦略:高品質・短納期を武器にイベントユニフォーム市場へ展開
- WO戦略:後継者のIT知識を活かし、ドローン×SNSによる新サービス提供
- ST戦略:ワンストップ体制で安定顧客維持
- WT戦略:非効率機械を刷新し、生産性を底上げ

■実行した支援内容
- 機械の更新:最新刺繍機械を導入、納期半減・品質向上
- サービス開発:ユニフォーム購入者にドローン撮影サービスを付加
- SNS連携:チーム動画をインスタ・YouTubeで即時共有できる仕組み構築
後継者というヒトに今までにない技術や魅力があった点が大きな強みです。私の経験上、後継者にIT知識や機械知識がある場合は、先代の事業を加速化させる傾向があると考えています。
■成果と今後の展望
- 月間受注数が1.5倍に拡大
- 新規市場(クラブチーム・イベントユニフォーム)からの受注が2割超
- 5年で法人化・人材採用を目指すロードマップ策定
今も成長し続けています。
まとめ
SWOT分析は、ただ4つに分類して終わる分析ではありません。「クロスSWOT」によって戦略を導き出すことこそが真の活用法です。
試験で問われるポイントまとめ
- SWOT分析は単なる分類でなく、クロスSWOTで戦略を導出する力が問われる。
- 内部資源の整理では、ヒト・モノ・カネ・情報の観点が必須。
- クロスSWOTの4象限ごとの特徴と使い分けを明確に説明できるようにしておくこと。
ヒト・モノ・カネ・情報の視点を取り入れて、自社の強みと弱みを精緻に把握することで、実現可能な戦略を描くことができます。
もし、私と同様に、知識だけでなく現場で経験を積みたい方は、商工会への転職も考えてみてください。一緒に、仲間として働きませんか?
本日もありがとうございました。
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