突然ですが…
「この機械、補助金で買えたらいいのに…」
「DXもやりたいし、人も採りたいけど、予算が足りない…」
「いろんな補助金があるけど、併用ってホントにできるの?」
そんな悩みを抱える中小企業・小規模事業者の経営者やご担当者様へ。
おはようございます。
経営指導員&中小企業診断士のセバスチャンです。
今回は「複数の補助金制度を併用する方法とその注意点」について、フレームワークを活用しながら徹底的に解説します。
この解説を学べば、限られた自己資金の中でも最も効果的に補助金を活用し、事業の成長を加速することが可能になります。
良く相談のある内容だ!
なぜ補助金の“併用”が注目されているのか?
今、中小企業が直面している経営課題は複雑化しています。
たとえば「インボイス対応を進めながら、同時に販路拡大も狙いたい」「人手不足を補う省力化投資と、集客強化のWebサイト構築を並行したい」といった声は非常に多くなっています。
これらを一つの補助金だけでまかなうのは困難であり、補助金制度の“併用”は、こうした複数課題に同時対応できる現実的な手段として注目されているのです。

さらに、競合企業も補助金活用に力を入れており、資金力や人材リソースの差を補うには、戦略的な制度活用が必要不可欠です。自社としては、単独の補助金申請では実現できない規模や範囲の施策に挑むことが可能になり、長期的な競争力の確保にもつながります。
要素 | 解説 |
---|---|
顧客(Customer) | DX対応・物価高対策・人材確保など複数の経営課題が同時進行中。補助金を“単発”で使っても追いつかない。 |
競合(Competitor) | 他社も複数の制度を研究・活用し始めており、後手になると競争力で不利に。 |
自社(Company) | 単一補助金ではカバーしきれないコスト構造や戦略を補完するための“併用設計”が重要。 |
併用設計は可能だ!
補助金併用のメリット
補助金の併用は単なる資金調達手段にとどまらず、自社の経営資源を活かし、戦略的に競争優位を築くうえで重要な手段となります。

補助金の併用によって、事業の実現性が増し、他社との差別化が可能になり、さらに専門性の高い取り組みで模倣困難な仕組みを構築できます。
また、社内外の支援体制を強化することで、実行と成果につながる仕組みが整い、補助金活用の質と効果が飛躍的に向上します。
観点 | 解説 |
Value(価値) | 複数制度を組み合わせることで、広範な支出を補助対象としやすく、経営計画の実現性が高まる。 |
Rarity(希少性) | 多くの事業者が単一補助金に留まる中、併用戦略は差別化要因となる。 |
Imitability(模倣困難性) | 複数制度のルール把握・戦略設計には専門知識が必要。簡単には真似できない。 |
Organization(組織体制) | 商工会・診断士など支援機関と連携することで、併用成功の土台が整う。 |
ただし、簡単ではないぞ!
補助金併用の代表パターンと対象経費
各補助金制度にはそれぞれ異なる補助対象経費と政策目的が設定されており、それらを理解したうえで組み合わせることで、事業に必要な投資全体を効果的に補助の対象とすることが可能になります。

たとえば、IT導入補助金で業務効率化のためのソフトウェアを導入しつつ、ものづくり補助金で生産ラインを刷新する。そして、その取り組みを広く告知するために小規模事業者持続化補助金でWebサイトを強化する。
このように補助金同士の得意領域を組み合わせることで、単一の補助金だけでは実現できなかった総合的な事業強化が可能になるのです。
ポイントは「対象経費の被らない範囲で明確に役割分担する」こと。
そして、事業の目的・方向性が複数補助金の政策目的に合致していることを、事業計画書の中でしっかり説明できるかが成功のカギとなります。
補助金名 | 対象経費 | 組み合わせ例 |
IT導入補助金 | ソフト・ハード・役務費 | インボイス対応+セキュリティ対策で複数枠同時活用 |
ものづくり補助金 | 設備投資・システム投資 | 高額設備+新商品開発 |
小規模事業者持続化補助金 | 販促・展示会・Web関連 | SNS広告・EC開設など広報と販路開拓に |
重要なのは、「事業計画全体としては一貫したビジョンを持ちつつも、補助金ごとに申請する“手段”の切り口や経費のカテゴリを明確に分ける」ことです。
たとえば、同一の新商品開発プロジェクトであっても、「設備導入」はものづくり補助金で申請し、「販路拡大策」は持続化補助金、「業務効率化」はIT導入補助金といったように、各補助金の趣旨に合わせて適切に切り分けることで、合法かつ戦略的な併用が実現します。
補助金併用の注意点
制度を正しく理解し、意図的・無意識にかかわらず重複受給とみなされるような事業構成を避けることが、補助金併用戦略の第一歩です。補助金の併用には大きなメリットがある一方で、それに伴う注意点もしっかりと理解しておく必要があります。
特に、
「資金繰りの見通しが甘く、補助金の入金前に資金ショートする」
「制度のルールを誤解して不採択や返還処分を受ける」
「外部支援者と不適切な契約をしてペナルティを受ける」
といった事例は少なくありません。

補助金の併用を成功させるには、これらのリスクを早期に洗い出し、具体的な対策を講じておくことが不可欠です。
計画段階から支援機関や専門家と連携し、自社の現状と補助制度を照らし合わせながら、無理のない併用設計を行いましょう。 申請制限・処分制限・税務対応・不正指摘など法的・実務的なリスクが存在。 |
分類 | 内容 |
Strength(強み) | 複数の政策目的に対応した高度な事業計画が立てられる。 |
Weakness(弱み) | 自己資金や実行力がないと途中で頓挫する可能性。 |
Opportunity(機会) | 国のDX推進や地域活性化策の流れを背景に活用できる枠が増加中。 |
Threat(脅威) | 申請制限・処分制限・税務対応・不正指摘など法的・実務的なリスクが存在。 |
ミスは死活問題になる!
各補助金別“重複申請”と“制限条件”の具体的な注意点
補助金制度の併用は事業の拡大に有効ですが、補助金ごとに設けられた重複条件を把握していなければ、制度違反として申請却下や返還措置を受けるリスクがあります。
ここでは代表的な4つの補助金制度について、申請時に注意すべき重複条件・申請制限をまとめて解説します。
1. 中小企業省力化投資補助事業(一般型)
- 他の補助金と対象経費が重複している場合は不可。
- 「観光地・観光産業における人材不足対策事業」との併用不可。
- 「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」の過去2回以上の受給者は申請不可。
- 「みなし同一法人」の範囲に該当する場合は1社のみ申請可能。
- 同一または酷似した事業計画を複数事業者で提出する行為はペナルティの対象。
2. IT導入補助金2025
- 他の補助金と経費の重複は不可(不正扱い)。
- 同一補助金内の複数枠(インボイス・通常・セキュリティ)は申請可能だが、経費の二重計上は禁止。
- 同一法人・同一人物の複数申請不可。
- 過去の申請との関係で、一定期間内の再申請制限がある。
3. 小規模事業者持続化補助金
- <創業型>と<一般型>の同時申請は不可。
- 報告書未提出者は新規申請不可。
- 同一人物が代表の複数法人での同時申請は不可。
- インボイス特例は再申請不可。
- 過去に実施した事業と酷似している場合、不採択の可能性あり。
4. ものづくり補助金
- 他の補助金との対象経費重複は不可。
- 「みなし同一法人」の制限があり、1社のみ申請可能。
- 株主構成・出資比率を変更しての申請は不可。
- 外注先として過去の採択事業者を利用することには制限がある。
- 不正や加点要件未達成の場合、他の補助金申請に大幅な減点。

共通して注意すべきポイント
- 補助金は原則後払いのため、自己資金や金融機関の支援が必要。
- 交付決定前の発注・支払いはすべて対象外。
- 複数補助金を活用する場合、対象経費と事業の切り分けが明確である必要がある。
- 事務局ごとの条件を必ず事前に確認し、文書で記録を残すことが重要です。
運営事務局や支援機関へ相談だ!
特に注意すべきリスク項目(チェックリスト)
最後に、特に注意すべき項目についてまとめましたので、必ず漏れがないかチェックしてくださいね!
- ☐ 自己資金の事前確保(後払いが基本)
- ☐ 重複受給の禁止(同一事業内容はNG)
- ☐ 「みなし同一法人」による申請制限
- ☐ 同時申請の制限(創業型と一般型は併用不可など)
- ☐ 賃上げ未達成による今後の減点
- ☐ 書類保管義務(5年間)
- ☐ クレジット/振込などの支払い方法制限
- ☐ 外部支援者の報酬・契約情報の開示義務
- ☐ 財産の処分制限(50万円以上)
- ☐ 補助金は課税対象(消費税控除額に注意)
ここは最低限抑えておこう!
まとめ
複数の補助金制度を併用することで、より高額で広範な支援を受けることが可能になります。しかし、それと同時に厳格なルールの理解と遵守、計画的な実行体制の構築が不可欠です。
- 複数の補助金を戦略的に組み合わせれば、受給額の最大化が可能。
- ただし、重複受給や申請制限など「ルール違反」は厳禁。
- 併用するには、フレームワークに基づいた計画策定と、事務局との事前確認がカギ。
特に以下の3点がポイントです。
- 全体戦略に基づいた“設計図”を持つこと
- ルールの確認・遵守と、事務局への事前相談を徹底すること
- 信頼できる支援機関と連携すること
不明な点は、お近くの商工会・商工会議所へ無料相談できます。また、必要に応じて、中小企業診断士等の専門家派遣(無料)も活用可能です。
参考書
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