突然ですが、こんなお悩みはありませんか？
「シナジーって言葉はよく聞くけど、結局どう試験に出るの？」
「範囲の経済って規模の経済とどう違うの？」
現在、中小企業診断士試験の受験生であるあなた。 そうした疑問を放置したままでは、経済学・経営戦略の理解に決定的な穴が空いてしまいます。
おはようございます。経営指導員＆中小企業診断士のセバスチャンです。
今回の解説は、そんなお悩みについて、実際の経営支援現場に20年以上携わり、年間100件以上の事業者支援を実施している私の経験を基に、わかりやすく解説します。
この解説を学べば、「シナジーと範囲の経済」が実務と試験の両面で“使える知識”になること間違いなしです！
ウォームアップ：理解度チェック５問
問題1（基礎知識）
シナジーとは何を意味するか、最も適切なものはどれか？
① 規模を拡大することによりコストを削減する効果
② 二つ以上の活動が組み合わさることで、単独よりも高い効果が生まれること
③ 製品ラインを増やすことで売上を増加させる戦略
④ 海外展開による新市場の獲得
正解：②
解説： シナジーとは、経営資源の相乗効果によって、個別では得られない成果を生むことを意味します。
問題2（分類の応用）
以下のうち、範囲の経済が働いている例として最も適切なのはどれか？
① 同じ商品を大量に生産し、コストを下げる
② 製品Aと製品Bを同じ設備や流通網で提供し、コストを抑える
③ 複数の会社が共同仕入れを行う
④ 新規市場をターゲットに広告宣伝を行う
正解：②
解説： 範囲の経済とは、異なる製品やサービスを一括で提供することでコスト削減や価値向上が得られる状態を指します。
問題3（実務的視点）
建設業者が電気工事や水道設備の工事も同時に請け負うことで得られる効果は？
① 範囲の経済
② 規模の経済
③ スイッチングコスト
④ ネットワーク効果
正解：①
解説： 一つの企業が複数の異なる業務を一括提供することで、資源の共有が可能となり、範囲の経済が働きます。
問題4（過去問類似）
過去問で頻出のシナジーの具体的な分類に含まれないものはどれか？
① 販売シナジー
② 生産シナジー
③ 財務シナジー
④ 顧客シナジー
正解：④
解説： 顧客シナジーは一般的な分類には含まれず、販売・生産・財務・投資・経営資源などが代表的分類です。
問題5（事例からの出題）
再生可能エネルギー関連設備工事を主業務とする企業が害虫駆除事業を新たに開始し、空き家リフォーム事業に展開する。この戦略で働くシナジーは？
① 投資シナジー
② 財務シナジー
③ 経営資源シナジー
④ スコープシナジー
正解：③
解説： 再生可能エネ設備とリフォーム・害虫駆除に共通する営業資源・顧客基盤を活かした「経営資源シナジー」の活用です。
試験で問われるポイントまとめ
- シナジーは「相乗効果」として、成長戦略や多角化戦略で出題される
- 範囲の経済は、異なる製品や事業の共通リソース活用によるコストメリット
- シナジーと範囲の経済は、事業戦略・経営資源の最適活用に深く関与
- 類似概念との違い（例：規模の経済）を明確に理解しておくことが重要
中小企業は、ここで勝負！
「シナジーと範囲の経済」とは何か？
シナジーとは、複数の事業や活動が協調することで、単体では得られない成果を生む効果。販売シナジー、生産シナジー、財務シナジーなど種類がある。
範囲の経済は、異なる製品・サービスを一括提供することで、コスト削減や収益向上を図る戦略。
「シナジーと範囲の経済」は、単なる理論ではなく、企業成長と競争優位を構築するための武器です。
規模の経済とは？
念のために、規模の経済の復習もしておきます。
規模の経済とは、企業の生産量や事業規模を大きくすることで、1単位あたりのコスト（平均費用）が下がる現象です。
もっと簡単に言えば…
「たくさん作れば作るほど、1個あたりが安くなる」ということです。
大企業は、有利！
✅ なぜコストが下がるの？
以下のような理由で、コストが下がるからです：
| 主な要因 | 内容の説明 |
|---|---|
| 生産効率の向上 | 大量生産により機械の稼働率が高まり、ムダが減る |
| 仕入れ単価の低下 | 大量に材料を買えば、仕入先からの割引を受けやすい（ボリュームディスカウント） |
| 間接費の分散 | 設備投資や管理部門などの固定費を、多くの製品で分け合える |
| 専門化の促進 | 作業が細分化されて、従業員が熟練しやすくなる |
✅ 例で理解しよう！
例①：たこ焼き屋さんの場合
- 材料費：1回の仕入れで小麦粉を10kg買うと1kgあたり400円。
でも50kg買えば1kgあたり300円になる。 - 人件費：1時間1,000円のアルバイトが、10個作るのも、100個作るのも同じ時間。
👉だから、たくさん売るほど「1個あたりの原価」が安くなる！
✅ 試験での出題ポイント
- 「固定費があること」が前提条件
- 家賃・設備・人件費などの固定費を、多くの製品で分散する発想。
- 「平均費用（AC）」が下がると利益率が上がる
- 「限界費用（MC）」と比較されることがあるので注意
- 「範囲の経済」との違いを問われる
✅ 範囲の経済との違い（セットで覚えよう）
| 分類 | 内容 | キーワード |
|---|---|---|
| 規模の経済 | 同じ製品を「たくさん作る」ことでコスト減 | 数量、スケール、生産量 |
| 範囲の経済 | 違う製品を「まとめて作る」ことでコスト減 | 多角化、共通資源 |
✅ 実務的な活用のヒント
中小企業においては…
- 外注コストを内製化して固定費を最適化
- 販路拡大による生産量アップを狙う
- 原材料の共同仕入れでスケールメリット確保
などが具体的な活用例です。
中小企業の成功事例
ここでは、身近な企業を例に、シナジーと範囲の経済についてみていきましょう。
事例①：株式会社スノーピーク
スノーピークは、アウトドア用品の製造・販売を手掛ける日本の中小企業です。同社は「キャンプ＝生活文化」という視点から、アパレル・カフェ・宿泊施設などに事業を多角化。自社ブランドの世界観を活かして、商品間の販売シナジーを形成。
→ スノーピークは、シナジーと範囲の経済を「アウトドア・ライフスタイル事業」の中で巧みに活用しています。
事例②：株式会社ニトムズ
ニトムズは、粘着テープなどの製品で知られていますが、近年はオフィス用品や生活雑貨に多角化。共通する素材技術・生産設備を使って新商品を展開し、範囲の経済を強化。
→ ニトムズは、製品群をまたいだスコープ活用によって「共通技術による製品多角化」で範囲の経済を実現しています。
実務事例：ある地方都市の建設業Ａ社の挑戦
ここからは、実際に私が支援した事業者の実務を基に解説していきます。
実務支援で使い倒せ！
支援の背景
この企業は、長年地域で建設工事をしてきた会社です。でも最近は、空き家が増えてきたり、建物のリフォームのニーズが高まっていたりと、社会の動きが変わってきました。また、社長さんの後継ぎ問題（次に会社を継ぐ人）があり、新しい事業を立ち上げて若い人も活躍できる会社にしたいという希望がありました。
そんな中で、「空き家対策としての害虫駆除サービス」を新しく始めることにしました。
支援内容の活用（シナジーと範囲の経済）
この会社は、建設・電気・水道など何でもできる技術を持っています。その強みを活かして、新しく始めた害虫駆除やリフォームも、まとめて提供できるようにしました。
たとえば：
- 空き家の持ち主に「害虫駆除だけでなく、必要なら電気や水道の修理もできますよ」と提案。
- これまでの技術を別のサービスにも活用（＝シナジー）
- ひとつの家で、いくつかの作業をまとめてできるからコストも下がる（＝範囲の経済）
実行した支援内容
- 専門スタッフを採用
- 害虫駆除の経験が豊富な人を、地元にUターンしてもらって採用。
- 地域の空き家情報を活用
- 市役所や空き家バンクの情報を元に、「この家は使えそうだ」と目をつけて営業を開始。
- サービスのセット提案
- 害虫駆除＋軽いリフォーム＋掃除メンテナンスのセットをつくって、「このまま住めますよ」と提案。
- 安心感のある見守りサービスも開始
- 遠くに住んでいる家主に、「定期的に様子を見に行きます」というサービスも追加。
成果と今後の展望
- 10件以上の新しい依頼を受けることができました。
- 行政（市役所など）とも連携が進み、「地域の空き家を減らすモデル事業」として注目されました。
- 今後は「スマートハウス」や「不動産仲介」なども取り入れて、さらにサービスを広げていく予定です。
実務＆養成課程実習でも使えるワンポイント
→「事業の組み合わせ」で新たな価値を生む視点が、まさにシナジーの本質。
→ 経営資源の再配置により、範囲の経済が実現される。
アンゾフの成長マトリックスとの関係
アンゾフの成長マトリックスとは、「市場」と「製品・サービス」の２軸により、４つの成長戦略を示したフレームワークです。
| 既存市場 | 新市場 | |
|---|---|---|
| 既存製品・サービス | 市場浸透戦略 | 新市場開拓戦略 |
| 新製品・サービス | 新製品開発戦略 | 多角化戦略 |
今回のＡ社の戦略を当てはめると
- 害虫駆除サービス導入：新製品開発戦略
- 空き家リフォーム事業：多角化戦略
これらの戦略を実行する中で、シナジー効果（既存事業のノウハウ活用）や範囲の経済（同一顧客への複数提案）を実現している点が実務の要点です。
まとめ
🔸 今回の学びのまとめ
- 「シナジー」は、経営資源の連携で生まれる相乗効果
- 「範囲の経済」は、異なる製品や事業の共通化による効率化
- 試験ではそれぞれの違いと事例活用の理解が重要
- 実務では、戦略的に事業を組み合わせる発想が鍵
📌 実践アクション
- 自社や支援先で、複数事業の共通点を探してみる
- シナジーを生む部門間連携や業務の融合を考えてみる
- 製品ラインや顧客セグメントを、範囲の経済の視点で再整理してみる
もし、私と同様に、知識だけでなく現場で経験を積みたい方は、商工会への転職も考えてみてください。一緒に、仲間として働きませんか？
それでは、また！
参考書
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