私の名前は一悟。「いちもんじ さとる」と読む。あだ名は「いちご」だ。
もしかして、気づいた方もいるから、あえてツッコまれるのを覚悟で言うが、「仮面ライダーにごうは、いちもんじはやと」。
・・・
なお、閲覧に関しては自己責任であることと、一切のコメントへの回答はしないので、興味がある人のみ読んで欲しい。
(この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません)
【第4話】 生と死と右側の人 前編:893登場
皆さんは社会人になっていろいろな経験をおもちだろう。
世の中にはイロイロな人間がいる。たぶん友人から武勇伝のようにして、苦労話を聞き、面白いと感じるかもしれない。
そんな経験を皆経験している。
・・・経験しているはずだと思って社会人生活を送っていた。
そんな「ある当たり前の仕事」の一コマである。
私は午前2時に勃発した「深夜のカーニバル事件」の報告を明朝、藤谷店長に報告。
藤谷店長「大変だったね!副店長がくびにした松丘さんは、お客からのクレームも頻繁にある上に全然仕事ができなかったから、元々辞めてもらおうと思ってたんだ。気にすることないよ!何かあったら私からこう言うね・・・」
『私がくびにするように指示した』
と言うと、「安心して寝て!今日はお疲れ!」と肩を叩かれた。
私は危機感のないエロガッパ店長に少し愛想をつかしていたが、仮にも私より長くこの業界に精通している人間だ。後は任せよう。
一悟「あー!まじでつかれぁ~。今日はゆっくりしよう。」
私は帰路に着き、帰宅後、泥のように眠る。
(・・・数時間後)
「プルル、プルル・・・」
携帯音が鳴る。もう仕事の時間か?
・・・携帯のパネルに【藤谷店長】の文字が出る。時間はまだ午後3時だ。
一悟「勤務時間は午後9時からのはずなんだけどな?」
私は寝ぼけた頭で携帯に出る。
藤谷店長「副店長!!どういうこと?『君が辞めさせた』従業員のお父様が今来て、労働基準監督署に行くって言ってるよ!!昨日何があったの?」
と、わざと周りに聞こえるような「大声」で藤谷店長が私に言っている。
しかし、私は寝ぼけていたせいもあり、意味がわからず、無言でいた。
藤谷店長「とにかく今から来て!説明して!」
(ガチャ!)
とぶっきらぼうに電話を切られる。
とにかく私は全く意味が解らなかったが、急いで準備をして店舗へ向かった。
一悟「・・・(労働基準監督署?)」
(店へ到着)
私が店舗に到着すると店長が焦って出てきて、こう説明をしだした。
藤谷店長「副店長!さっきまで大変だったんだから!」
「【君が昨日くびにした】従業員のお父さんが来て、【オールフォーワン(会社名)はこんな不当な辞めさせ方をすっとや?労働基準監督署に駆け込むぞ!】て凄い剣幕で言われて、【今は事情を聞いてからお答えします】と言って一度帰宅してもらった。」
「また6時にくるから、君からきちんと説明して!」
一悟「・・・店長もおっしゃられていたとおり、使えないからくびにしたのが理由なんですが?」
『私がくびにすると指示した』
の言葉を思いだし、若干ふてくされながら私は言った。
藤谷店長「あのね。副店長!世の中には法律があるの。だからいきなり自分の判断で決断したらダメ。【報告・連絡・相談】が大切!」
一悟「・・・(おいおい)」
「・・・(いきなりマニュアル上司に変身ですか?)」
りふじん【理不尽】
藤谷店長「とにかく、相手が来たらまずは私からもう一度説明するから。君はとにかく謝って!」
一悟「・・・はい」
その時、私はこの店長が全く解決の方向性を見出せず「テンパってる」ことを理解した。
・・・てかお前こそ、解らないならお前の上司に相談しろよ!
【報告・連絡・相談】と私は思う。
いんぺい【隠蔽】
(そして約束の時刻・午後6時)
バン!
と乱暴にドアを開ける音がし、「その方」が入ってきた。
その方「店長おるや!呼んで来いや!」
【ドス】の効いた声が店内中に広がる。
すぐさま藤谷店長と私は事務所から出る。
そこに立っていたのは、全身黒のスウェットで身を包んだ、【明らかに一般人ではない風貌と迫力のあるお方】だった。
コード893:【や〇ざ】
コード893「・・・で、どう責任取るんや、店長?」
藤谷店長「申し訳ございません!」
コード893「おいおい。申し訳ございませんじゃないんだ。」
「息子が急に辞めさせられて、こっちも生活に困っとるんや。謝ってすむ話かい!」
何かこのやりとり吉本新喜劇で見たようなやりとりだが・・・
一言で言えば「金だせ」てことだと、私でもすぐ理解できた。
藤谷店長「申し訳ございません!」
店長がこの繰り返しなので、しびれをきらしたコード893の関心がこちらに向く。
コード893「お前が直接【くび】にしたらしいな、労働基準監督署に行って、洗いざらい話すぞ!コラ!」
一悟「・・・」
この場合のマニュアルはおそらく、今藤谷店長が行っている行動なのだろう・・・
だがしかし・・・だがしかし!私はどうしても納得いかなかった
・・・そしてなにより、社会に出てあまりにもまだ若かった。
一悟「あのですね!今回の件に関しては確かにいきなり解雇したのは認めます。」
「・・・ただその話に、お父さんが出てくるのはどうかと思います。本人としか、この件については話せません!」
コード893「なんだと!ぬしやぁ~(きさまぁ~)!」
藤谷店長「申し訳ございません!副店長!謝って!」
一悟「店長!直接、【この方】と二人でお話してもよろしいですか?店長は事務所にいてください。」
コード893「なんや?いい度胸じゃにゃーや(いい度胸だな)!おい兄ちゃん!なら、そこの隅っこの椅子のあるスペースで話そうや!」
「店長は下がってもらって、よかけん(いいから)!」
藤谷店長「とは申しましても・・・」
とは言いつつも、コード893は完全に臨戦態勢。
もはや収拾がつきそうにない状況もあり、店長は一旦事務所に入る。
それから【第二ラウンド】のゴングが鳴り響いた。
コード893「おい!コラ!」
「お前!ちゃんと意味解って言ってんだろうな!誠意みせろや。」
一悟「・・・誠意と言いますと、【お金】のことですか?」
コード893「いやいや、【金】とは言っとらん。」
と言葉を濁す。さすがの新人の私でも知っている。
【お金の要求】は明確な脅迫になるからだ。
一悟「お金でなければ何をお求めなのですか?」
コード893「ぬしやぁ(きさま)!なめとんのかぁ!」
と店内中にどなり声が響き渡る。コード893の顔が真っ赤に紅潮する。
・・・もうここまで来たら私も引くに引けない。
一悟「先ほども言いました通り、ご本人と話をさせてください。」
「そして!!お金に関しては働いた分しか当然だせませんし、ご納得頂けなければ、労働基準監督署に行って頂いて結構です!!」
(・・・やっちまった)
私は当時法律のことなど全く知らない、完全に【勢い】で言ってしまった。
しかし!私は実はここで【賭け】に出たのだ!
この人は「コード893」ではないと。はったりだと!
しかし、おそるおそるコード893の顔を見ると、もはや【タコ】よりも顔が真っ赤で噴火寸前!
(・・・終わった)
しかし次の瞬間何を思ったかコード893は店内のトイレへ駆け込む。
「おらーーーーー!!」
「く〇がぁーーー!!」
と、どなり声がトイレから響く。
さすがにやばいと感じる。
・・・本当に〇されるかも・・・
バタン!
とコード893がトイレから出てくる。
顔の紅潮が収まっている?
コード893「・・・どうしても働いた分しか払えんちゅうことやな!」
「なら、それでええけん、明日までに用意しとけ!!」
と言い放ち、あっけなくコード893は夜の町へと消えていった。
一悟「・・・(よくわからんけど。なんとかなった)」
その瞬間、さすがに気が抜けた。
藤谷店長に今までのやりとりを話すと
藤谷店長「はったりだんたんかな?」
と、ひとごと発言。
一悟「・・・(もっとしっかりしてくれ!)」
精神的にヘロヘロになった私は胃腸がやられ、トイレに駆け込む。
すると・・・
一悟「!?」
ト・イ・レの蓋
か・ん・ぼ・つ!!
底(そこ)~!!
(トイレの蓋が陥没して底が見えている)
・・・だが、もういい。これ以上は関わりたくない。私はすぐさま修理業者を呼んだ。
しかし、このコード893とのやりとりは、まだ終わらない・・・
もう勘弁して!
